研究課題/領域番号 |
15K10024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小濱 和貴 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (50322649)
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研究分担者 |
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
坂井 義治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60273455)
前田 太郎 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (00260521)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感覚融合 / ウェアラブルデバイス / 内視鏡下手術 |
研究実績の概要 |
当研究では、「視野の融合」と「ウェアラブルデバイス」を用いて、低侵襲外科手術手技の統合的なトレーニングシステムを開発・構築する。低侵襲外科手術は、動きの制限される鉗子を使って限られた狭い空間の中で剥離操作や縫合結紮を行うため、高度な技術が要求される。その技術を効率よく伝達するためのトレーニングシステムの開発が主な目的である。われわれは、執刀医坂井(京大)・スコピスト小濱(京大)・助手1名により施行・撮影されたアニマルラボにおける腹腔鏡下S状結腸切除術を用いて、教材を作成した。具体的には、手本となる手術動画である前述の腹腔鏡下S状結腸切除術を、約30秒から5分程度の10の工程に分解し、これに従来からわれわれが用いている「視野合成法」で学習者の鉗子がモニター上で重畳できるようにした。手術中に手術用スコープが動くことによって画面の見え方は変化するが、これは手本動画撮影時にスコープに位置センサーを装着して経時的に変化するスコープ先端の位置を3次元的に記録し、トレーニングシステム(「追いトレアドバンス」と命名)に組み込んだ。これにより、学習者が手本動画をモニターに映して自分の鉗子を重ねあわせて熟練者の鉗子の動きをスムーズに追いかけていき、あたかも自分が熟練者になって手術しているような没入感を得ることができる。これが、鉗子操作の繊細な動きを言葉によらずに習得できる良い方法であると考えている。 実際にこれを研修医4名(腹腔鏡下S状結腸切除未経験の医師)に使用、トレーニングさせたのちに、アニマルラボでS状結腸(腹腔鏡)の手術を施行させたところ、4人とも鉗子操作の手順接続がスムーズになり、役立ったと回答した。これについては、別紙記載の日本外科学会や日本臨床外科学会で発表した。 また、このような視野融合システムの3D化も行い、これは日本バーチャルリアリティ学会論文誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画のなかで、①「視野の融合」を用いたシミュレーションによるトレーニング、においては、おおむね達成できていると考える。すなわち、ブタを用いたS状結腸切除術(腹腔鏡)での指導者の剥離操作を編集した手本動画を作製し、この動画をトレーニング装置の学習者のモニター上に重ねて表示できるようにセットアップ、学習者が低侵襲手術における剥離操作をシミュレーションする(熟練者の鉗子操作を追いかけるようになぞる)ことができるようにトレーニングシステム「追いトレアドバンス」を設計した。これを実際に学習者に使用してもらって、アニマルラボにおける実際の手術も施行させ、その使用感や今後の改善点なども情報収集した。②「視野の融合」を用いたリアルタイム手術支援モデルの構築に関しては、現在システムを構築中である。学習者が実際にブタの手術を行っているモニターに、指導者の鉗子の動きをリアルタイムに映しながら指導できるように設計しているが、学習者の実際の手術モニターにどの程度まで指導者の鉗子を重畳して映すのか、条件検討を行っている。③④のロボット支援手術におけるシステムや、ウェアラブルデバイスを用いたシステムについては、現在システム設計の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
①「視野の融合」を用いたシミュレーションによるトレーニングについては、定量的な評価を行えるように検討していく。②「視野の融合」を用いたリアルタイム手術支援モデルの構築については、条件検討を今後も続け、まずはアニマルモデルで使用可能となるようにしていく。③④については、前述のとおり現在システム設計の段階であり、順次システムの構築を行う。④のウェアラブルデバイスを用いたシステムは、まずヘッドマウントディスプレーを用いたシステム構築が妥当と考えているため、これを今後実現すべく研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の端数が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合わせて使用予定である。
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