当研究目的は同種異系抗体産生マウスモデルにおいて、慢性拒絶反応の原因となる抗ドナーHLA抗体産生を制御する治療法開発を行うこと、異種抗体産生マウスモデルにおいてヒトNeuGc抗体による遅延型抗体性拒絶反応の制御を試みることである。 平成29年度の研究成果としては、ヒト末梢血単核球をB細胞活性化伝達シグナル(CD40-CD40ligand)を遺伝子導入したfeeder細胞上で培養した後に、ヒト化マウスへ移入することによって安定したHLA抗体産生が認められるようになったが、抗ドナー特異的HLA抗体産生のみが産生抑制に傾いている現象を認めた。そこで、B細胞活性化し抗体産生を促進する別のシグナル(BAFF-BAFF受容体)をさらに遺伝子導入した培養系や、培養中のrespnder細胞からヒト抗体産生を抑制する可能性のあるCD4陽性CD25陽性で分画される制御性T細胞を除去し、同様にヒト化マウスモデルを作製した。 しかしHLA抗体産生はむしろ低下し抗ドナー特異的HLA抗体の産生も認めなかった。 そこで、この培養系で使用したresponder細胞上の他の抑制性シグナルを調べたところ、T細胞活性抑制シグナルPD1-PDL1がドナー抗原特異的に増強している可能性を見出し、responder抗原提示細胞上のPDL1発現のupregulatioが確認された。 平成27年~29年度全期間を通じての研究成果としては、ヒト細胞を用いたHLA抗体産生ヒト化マウスモデルを確立し得たこと、ドナー特異的抗体産生抑制機序を検証し得るマウスモデルである可能性が示されたことが挙げられた。また異種抗体産生ヒト化マウスモデルにおいてNOD-SCIDベースの異種抗原ダブルノックアウトマウスはT細胞リークが生じることがわかり、モデル変更を余儀なくされた。
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