研究課題/領域番号 |
15K10026
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 友加 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 准教授 (90432666)
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研究分担者 |
大段 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (10363061)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / 拒絶反応 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
本研究は、臓器移植においてアロT細胞応答の個体差に制御性T(Treg)細胞の制御機能がいかに関連するかを解明するために、Treg細胞のマスター遺伝子であるFoxp3の一塩基多型(SNP)と移植後の拒絶反応、ウイルス性肝炎、発がん等との関連性を解析し、移植後の個別化免疫抑制療法を行う上で、Foxp3-SNPが有益なゲノム情報となりうるかを明らかにすることを目的とする。これまでの研究において、Foxp3の3種類のSNP(Rs3761547, Rs3761548, Rs2232365)の解析を肝臓移植、腎臓移植症例に行った。肝臓移植後の細胞性拒絶反応(ACR)において、FOXP3rs3761548のSNPによるACR発症との関連性は認めなかったが、FOXP3 rs3761548 A/C+A/A genotypeは、C/C genotypeに比べて有意にステロイド抵抗性拒絶反応の発症率が高いことを確認した。また、ACR発症例における術後1か月目のドナー特異的抗体産生(DSA)の発症頻度は、C/C genotypeで20%であったのに対し、A/C+A/A genotypeでは80%と高く、de novo DSAの発生にFOXP3-SNPの影響が示唆されることを確認した。Rs3761547やRs2232365と臨床所見との関連性および相乗効果は認めなかった。また健常人ボランティア末梢血を用いたHLAミスマッチ間や、移植後末梢血を用いたリンパ球混合試験によるアロ応答性において、FOXP3-SNPによるアロT細胞応答性やTreg細胞の存在比率には有意差は認めず、拒絶反応時におけるTreg誘導や機能に本SNPが関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床臓器移植における解析は順調に進行している。今回、新たにステロイド感受性とFOXP3遺伝子多型との関連性が示唆される結果を得たため、関連性についての基礎実験を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓移植および腎臓移植症例については、慢性期における免疫抑制状態あるいはDSA出現、拒絶反応発症とFOXP3-SNPの関連解析を継続する。ステロイド感受性とFOXP3-SNPの関連が示唆されることから、アロ応答性に伴うTreg誘導にステロイド添加実験を追加し、SNPによる誘導効率について解明する。また、誘導Treg細胞におけるTCR variantやDNA methylationを評価し、関連性を解析する。
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