研究課題
肝移植において免疫寛容誘導による免疫抑制剤からの離脱は究極の目標である。元来肝臓は門脈血流を介して腸管などからの異物が取り込まれているにも関わらず、肝内免疫は一定に制御されており、肝内免疫をコントロールするメカニズムの存在が示唆される。すなわち不必要な免疫活性をおさえることで肝内免疫を安定に保ち、肝内免疫はimmunogenicではなくtolerogenicになっているべきであると考えられる。肝類洞壁細胞(liver sinusoidal endothelial cell)やKupffer細胞等とともに肝星細胞(Hepatic stellate cell)はこの免疫寛容環境の維持に重要な役割を果たしていると推測される。肝内免疫と肝星細胞に関する報告はこれまでなく、そのメカニズムは不明である。もう一つ今回着目した小胞体ストレスであるが、小胞体は体内にUbiquitousに存在しており、小胞体ストレス応答は生体の恒常性維持に重要な役割を担っている。免疫制御と小胞体ストレスに関してはこれまでにいくつかの報告がみられ、小胞体ストレス経路の1つであるPERK経路が自然免疫を担うマクロファージのCHOP誘導を介したアポトーシス抑制や、獲得免疫の恒常性維持のためその源となる造血幹細胞の品質維持に関与していることが報告されている。本研究での目的は、肝移植免疫における肝星細胞の役割と小胞体ストレスの関与について、ヒト及びマウス検体より単離した肝星細胞を用いたin vitroの実験、小胞体ストレスノックアウトマウスを用いたin vivoの実験により明らかにすることである。
すべて 2017
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Hepatology Research
巻: 47 ページ: 505~513
DOI: 10.1111/hepr.12872