研究課題/領域番号 |
15K10032
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
関島 光裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (20568589)
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研究分担者 |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 准教授 (90452333)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 腎移植 / 臓器灌流保存 / ミニブタ / 前臨床研究 / 硫化水素 / マージナルドナー / 臓器保護 |
研究実績の概要 |
深刻なドナー不足に対し、条件の厳しい心停止ドナーへの適応を拡大する際、虚血再灌流障害IRI による急性臓器不全だけでなく、免疫因子の活性化による急性・慢性拒絶の発生増加が懸念される。硫化水素H2Sの抗炎症・抗酸化作用が報告されることに注目し、移植医療の向上をはかる前臨床研究を行っている。 H27年度は腎IRIモデルを用い、H2S供与体として硫化ナトリウムNa2Sを再灌流前後に投与したところ、静脈投与でも効果が得られるが、腎動脈投与した場合により有効であることを示した。この結果を受けてH28年度は、免疫反応が軽度なMHC適合間クラウン系ミニブタ腎移植モデルを用いて、移植時のH2S投与効果を評価する実験に着手した(目的2)。120分間温虚血にさらした腎を用いて、12日間のタクロリムスのみを周術期の免疫抑制剤として用いる移植モデルを対照群とし、タクロリムスに加え周術期に経静脈的にNa2Sを投与したレシピエント投与群と比較したところ、腎機能障害は可逆性であったものの、H2S投与による有意なCre上昇抑制効果は認めなかった。 腎IRIモデルでは全身(静脈)投与よりも局所(経腎動脈)投与の方が有効であるというH27年度の実験結果を受けて、常温での腎臓持続体外灌流保存法NEVKP時のH2S局所投与の有効性を評価する検討へと進んだ。H28年度はNEVKP法の確立を最大目標とし、遠心ポンプを用いた体外循環回路に腎臓を接続した後に、赤血球添加ヘパリン化リンゲル液を用い37℃で120分灌流(平均動脈圧85 mmHg)し、灌流中の指標(灌流圧や灌流流量、尿量、動脈・静脈酸素化や組織酸素消費量、電解質・糖・生化学検査)を評価するとともに、NEVKP法で灌流保存を行った腎臓を用いた移植も問題なく行いうることを確認し、移植前臓器に対するH2Sの投与効果を評価する実験が可能なモデルの確立に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は研究計画に従い120分温虚血腎を用いた移植モデルによって、H2Sの全身投与の有効性を評価する実験を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に確立した、120分温虚血にさらした腎臓を、120分間NEVKP法を用いて灌流を行い、その際にH2Sを投与する有効性を、以下の指標をもとに評価する。MHC確立クラウン系ミニブタを用い、MHC適合およびMHC完全不適合移植を12日間の持続タクロリムスを唯一の免疫抑制剤使用下に行う。 ●灌流法:遠心ポンプを用いた体外循環回路に腎臓を接続した後に、37℃で120分灌流。●灌流液:赤血球添加ヘパリン化リンゲル液をベースとする灌流液。●灌流圧:平均動脈圧85 mmHg。●灌流中の指標:経時的な灌流圧や灌流流量、尿量、動脈・静脈採血の酸素化や組織酸素消費量、電解質・糖・生化学検査。●移植後評価:腎機能、生検による腎機能、血清・臓器の炎症性サイトカインや酸化ストレスマーカーの評価。
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