研究課題/領域番号 |
15K10033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
穴澤 貴行 京都大学, 医学研究科, 助教 (90566811)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移植外科学 / 糖尿病 / 細胞移植 / 膵島移植 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
膵島移植は、重症低血糖発作を伴うインスリン依存糖尿病患者に血糖応答性インスリン分泌能の回復をもたらすが、移植グラフトの生着率改善が最大の課題である。移植細胞の生着を改善するために、移植前の培養や加工による「Preconditioning」を行うことは、有効なアプローチとなり得る。本研究では、バイオインフォマティクス的アプローチを用いて、臨床応用可能な移植前グラフト処置法を開発することを目的とした。 先行研究で有効性が確認されているMitomycin Cによる移植前グラフト処置を行い、生着率の改善の確認と、その機序の解明からアプローチすることとした。ラット膵島のマウスへの免疫抑制剤非使用移植実験(腎比較下)の結果、MMC処置膵島の平均生着期間は、非処置膵島と比較して有意に延長することが明らかとなった。移植部位の免疫細胞数はMMC処置膵島で有意に減少し、局所免疫不応答の誘導が示唆された。Microarray結果の解析では、MMC処置膵島で多くの遺伝子群(cellular movement, immune cell trafficking, inflammatory responseなど)の発現が抑制されていた。これらの遺伝子群より、膵島より分泌される免疫細胞遊走因子(サイトカイン・ぺプチダーゼ)がMMC処置により複数で同時に抑制されていることが注目され、検証実験で遺伝子解析の妥当性が確認された。また、膵島培養液に対するマウス単球の遊走能は、MMC処置群において有意に抑制された。 膵島グラフトにMMC処置を付加することにより、免疫細胞遊走因子の分泌が抑制され、局所免疫反応の不応答を誘導し、グラフトの生着延長がもたらされる機序が示唆された。その機序の妥当性をさらに次年度で検証し、臨床応用への検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、すでに各条件下でのマイクロアレイ解析を終えることができており、移植前膵島培養法を改善する為の基礎データが得られている。また、前年度に比べ、アレイデータの検証実験が進捗してきており、すでに論文発表にも繋がる成果が得られている。今後更なる検証作業と臨床応用可能性を探る検討が必要であるが、本研究の目的に照らしあわせると概ね順調に進捗していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイで得られたデータは膨大で、まだ検証すべき機序が残されている。また、臨床応用のためには腎比較下移植モデルでなく、経門脈移植での検証が必要と思われる。経門脈移植を行い、移植された肝組織の検証を中心に、自然免疫応答、Allo免疫応答等の反応の変化を詳細に検討することを予定している。
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