研究課題
【目的】最近ランダム化比較臨床試験によってCTLA-4 や PD-1 阻害の有用性が証明され,免疫不活化経路阻害が新たな癌治療法として,世界的に注目されている.我々これまでに,種々の癌腫において PD-1 や B7-H3 などの T 細胞不活化経路が重要な臨床的意義を有することを報告してきた.本研究では,これまで独自に蓄積してきた一連の研究成果と,最新の免疫・癌研究の報告を融合・発展させ, (1) 新規免疫治療標的分子の探索,(2) 癌幹細胞に対する免疫不活化阻害効果の検証を目的 とし,さらには(3) 臨床応用可能な新規癌免疫集学的治療法の開発を最終目標とした.本年は,まず新規治療分子のスクリーニングとなる基礎研究を展開した.【方法・結果】新たなT細胞不活化経路として,CD155やNectin Superfamilyに注目し,免疫染色等により検討し,その臨床病理学的意義を最難治癌である膵癌において評価した.CD155の腫瘍発現は,多変量解析の結果,膵癌術後独立予後因子であることが判明した.また,CD155と腫瘍免疫,腫瘍血管新生,癌細胞周期と間に有意な関連が認められ,多様なメカニズムが関与しているものと思われた.さらに,関連する因子として,Nectin-4についての解析を進めた結果,同様に膵癌予後因子として,臨床的意義を有していることが明らかとなった.また種々の解析にて,膵癌細胞増殖,血管新生等との有意な関連が認められ,膵癌増殖・進展の新たなメカニズムの一端を担っているものと思われた.いずれの分子についても,最難治癌である膵癌に対する新たな治療標的分子となり得る可能性が示唆された.【考察】今後新たな治療標的分子となり得る可能性が示唆された.さらに一連の研究成果を発展させ,新たな癌治療法の開発に向けて,当初の計画案にそって,研究を進めていく予定である.
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って,概ね研究は順調に進んでいますが,当初予定していた癌幹細胞に関する研究の一部は,未実施となっている.
当初の研究計画に沿って,引続き,前年度の研究を継続,推進していく予定である.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件)
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