研究課題
本研究の目的は,大腸がんの新たな血中マーカーとしてのmicroRNA を特定することであり,臨床応用を目標とする.長らく抗がん剤治療が適さないとされてきた大腸がんであったが,近年,抗腫瘍効果の高い分子標的薬の開発により飛躍的に治療選択肢が増えた.しかし既存のCEAや CA19-9,p53抗体などの大腸がんマーカーでも採血のみでがんを診断することは難しく,早期診断は困難である.様々な抗がん剤を含む幅広い選択肢から最適な治療選択を行うための指標となる高い診断力を持ったマーカーの新規開発が急務となっている.報告者らは大腸癌の血中腫瘍マーカー候補としてのmicroRNAの抽出・特定を目的として,同一患者の治療適応前後のマイクロアレイ解析を行い,比較解析を行った.報告者らのグループにて既に保存してあった大腸がん患者の検体を用いることでこの比較解析が可能となった.さらに報告者らはstageごとに症例を選抜したうえでRNAを抽出し,microRNAの解析を行い,大腸癌診断マーカー候補となるmicroRNAを特定した.これらのマーカー候補遺伝子の発現の変動に着目して患者の経過を追跡し,目下,各種治療効果との対照を進めている.本研究結果から,血中microRNAの新たな診断マーカー,治療効果判定因子としての臨床応用可能性が明らかになってきている.この成果は 大腸癌の早期発見や 診断の簡便化、信頼性向上の観点から有意義であるとともに、日本の知的財産の活用という側面でも貴重である。
2: おおむね順調に進展している
網羅的な発現解析の結果,当初想定したよりも病態特異的に発現異常が見られる候補遺伝子を多数挙げることができた点においては,進展であるといえる.一方,このために判定マーカー候補の選抜に時間を要したこと,またこの分野の急進に鑑み症例数を増やし発現レベルを検証することが望ましいと考えたことから研究期間の延長を申請した.以上を合わせ,研究は概ね順調に進展していると考えられる.
この分野の急進に鑑み,30年度はこれまでに得たデーターに加え,症例数を増やしマーカー候補の発現レベルを検証していく予定である.またstageごとの症例選抜,同一患者検体の遺伝子発現,その他各種分析結果の追跡,臨床データーの追跡を行い,抗がん剤を含む各種治療の効果との対照も検討していく.なお作成中の論文原稿に追加データを加え,効果的な研究成果公表の準備を行う.
網羅的な発現解析の結果,当初想定したよりも病態特異的に発現異常が見られる候補遺伝子を多数挙げることができたため,判定マーカー候補の選抜に時間を要した.このためデーター解析に要する経費について次年度使用額が生じた.一方,一部既存設備の利用により一部の研究資材の購入を延期した.この分野の急進に鑑み,30年度はこれまでに得たデーターに加え,症例数を増やしマーカー候補の発現レベルを検証するために追加の試薬・消耗品の購入を予定している.なお統合解析を要するデーターの量がますます膨大になってきており,解析のために十分な人員を要する.これまで見送ってきたアルバイトの雇用のため,人件費が必要である.
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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