研究課題
平成30年度末までに,当院で実施された生体腎移植例において,本研究の開始後同意の得られた58例の生体腎移植ドナーにつき,腎ダイナミック造影CTを施行し,分腎機能(GFR)を算出した.本研究で得られたGFR(D-GFR)とイヌリンクリアランス法にて測定したGFR(Cin-GFR)とを,すでに解析が終了している18例について比較検討した.症例は男性8例,女性10例.年齢は58.8±10.7歳,身長159±7.1cm,体重61.5±6.3kgであった.撮像には320列ADCT装置 Aquilion ONE (東芝メディカルシステムズ株式会社)を用い,造影剤にイオパミロン370(バイエル薬品株式会社),イオメロン350(エーザイ株式会社) ,オイパロミン370(富士製薬工業株式会社),オムニパーク300(第一三共株式会社)を用いた.腎血漿量測定のためのダイナミック造影CTは,造影剤注入開始後8秒~30秒まで2秒間隔で撮像した.18例のD-GFRは両側腎97.5±18.0ml/minであり,Cin-GFRは97.9ml±14.7/minであった.D-GFRとCin-GFRのGFRは,y=0.7846x+34.064,r=0.7071,p=0.003198と強い相関を示した.さらに生体ドナー5例と本ドナーから移植されたレシピエント5例について,ドナーの術前に測定したD-GFRとドナー,レシピエントの術後のeGFRの関係について検討した.術前に測定したドナーの提供腎のD-GFRとレシピエントの移植後6か月のeGFR,ドナー残腎のD-GFRと術後6か月のeGFRは有意な相関を示し,本検査法は生体腎移植においてドナーの腎機能の予測,レシピエントの腎機能の予測が可能であり,安全な生体腎移植の実施に大きく寄与すると考える.現在,D-GFRを用いた生体腎移植ドナー適応基準を作成中であり,今後ガイドラインを作成する予定である.
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