研究課題
自然免疫は獲得免疫の指向性に重大な影響を及ぼす。臓器移植においては、移植臓器の拒絶反応制御に、感染症においては、生体内のウイルス制御に影響を与えることが報告されている。本研究は、「自然免疫惹起刺激による免疫抑制機構を介した移植免疫抑制法の確立」を目的とする。研究の前半では、糖鎖変異ウイルスによる自然免疫刺激およびTLR2リガンドが、免疫抑制を誘導する機序の解析。研究の後半では、これらの刺激による、自然免疫機構を介した移植抗原特異的な免疫(獲得免疫)抑制方法の確立を、マウスアロ臓器移植モデルを用いて検討する。本年度は、今まで行ってきたマイクロアレイ解析から漏れていたサル個体を用いたマイクロアレイ解析をおこなった。糖鎖変異ウイルス、野生株、非感染の3グループの末梢血単核球を用いて行った。その結果、糖鎖変異ウイルス群において、特異的に発現の違いが見られる遺伝子群について、より詳細な情報を得た。移植分野においては、免疫抑制の誘導が知られているTLR2リガンドであるザイモザンを用いて、マウスアロ心臓移植における生着延長効果を検討した。その結果、コントロール群に比してザイモザン投与群では、有意なアロ心臓移植片の生着が確認された。また、自然免疫担当細胞である樹状細胞やマクロファージに発現するC型レクチンに属するDectin-1に特異的に取り込まれるsiRNAデリバリーシステムを構築した。本デリバリーシステムを用い生体の自然免疫担当細胞におけるCD40の発現を特異的に抑制した。CD40の発現が抑制されたマウスは、アロ心臓移植片の永久生着を示した。同時に、移植片へのCD4およびCD8T細胞の浸潤低下と、制御性T細胞および制御性ミエロイド細胞の増加が確認された。
2: おおむね順調に進展している
ウイルス感染症における解析では、in vitroおよびex vivoにおける解析を行う予定であったが、in vivoの詳細な解析を先に行った方が、より生体で起こっている事象を明らかにする事が出来るであろうとの判断から、in vivoのデータ解析を追加して行っている。
NGSを用いて、細胞種事のより詳細な遺伝子発現解析を行う予定である。
遺伝子解析試薬の購入金額が予定よりも安価であったため
追加の遺伝子発現解析試薬の購入を計画
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
J Heart Lung Transplant.
巻: Feb;34(2) ページ: 254-63
10.1016/j.healun.2014.09.037
Gene Ther.
巻: Mar;22(3) ページ: 217-26
10.1038/gt.2014.119
Int Immunopharmacol.
巻: Oct;28(2) ページ: 938-44
10.1016/j.intimp.2015.04.032.
Mediators Inflamm.
巻: 2015 ページ: 421927
10.1155/2015/421927.