研究課題
自然免疫は獲得免疫の指向性に重大な影響を及ぼす。臓器移植においては、移植臓器の拒絶反応制御に、感染症においては、生体内のウイルス制御に影響を与えることが報告されている。本研究は、「自然免疫惹起刺激による免疫抑制機構を介した移植免疫抑制法の確立」を目的とする。糖鎖変異ウイルス等による自然免疫刺激が免疫抑制を誘導する機序を解析し、これらの刺激による自然免疫機構を介した移植抗原特異的な免疫(獲得免疫)抑制方法の確立を、アロ臓器移植モデル等を用いて検討する。本年度は移植抗原に対する制御免疫反応を検証する一環として、自然免疫による非特異的な刺激による自己免疫性肝炎に対する免疫制御効果について検討を行った。ConcanavaliA(ConA)をC57BL/6(B6)マウスへ静脈投与する事によってT細胞依存性に引き起こされる肝炎に、自然免疫刺激として黒酵母由来のβグルカンの投与を行った。その結果、βグルカン投与群では、血清中ALTおよびASTの有意な減少が見られ、肝炎抑制効果が確認された。一方T細胞に対する免疫反応制御機構を検討するために、血中および肝臓における制御性T細胞の割合を検討したが有意な差は見られなかった。また、肝臓における炎症性サイトカインの発現を検討したが、何れにおいても有意な差は見られなかった。一方、iPS細胞からMDSC を分化誘導させ、自己免疫性肝炎モデルに対する肝炎治療効果の検討を行った。その結果、iPS-MDSCは生体内外においてT細胞の増殖を抑制すること、その増殖抑制効果はiNOS依存的であることが確認された。自己免疫性肝炎モデルに対するiPS-MDSCの投与は、ALTの低下、浸潤T細胞の抑制を引き起こし、自己免疫性肝炎の発症を抑制した。
3: やや遅れている
黒酵母由来のβグルカンの自己免疫性肝炎抑制効果を明らかにする事ができた。この効果は末梢の制御性T細胞の誘導とは異なる新たな機序によるものと考えられた。本機序を明らかにする事が出来れば、黒酵母由来βグルカンの自己免疫制御・移植免疫制御への応用を可能にすると考えられ、自然免疫による非特異的な刺激による、移植抗原特異的免疫制御(獲得免疫)の誘導解明にも寄与しうると考えられる。またiPS-MDSCによる自己免疫性肝炎抑制効果を明らかにする事ができた。一方、動物移植モデルにおける解析が遅れている。
動物移植モデルを用いた、免疫制御機構の解明を行う。
分担研究者による動物移植モデルを用いた検討を行う予定であったが、実験従事者がその他の業務の多忙により、移植動物モデル作製数が十分でなく、詳細な解析結果を出すまでの時間が足りなかったため。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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