膵神経内分泌腫瘍(pNET)は膵島細胞から発生する稀な腫瘍であり、転移を来たし悪性の経過をたどることが多い。また遺伝性腫瘍症候群の一部分症として発生することもある。近年pNETに対するmTOR阻害剤などの分子標的薬が臨床に導入されてきているが、治療効果はまだ限定的である。また遺伝性腫瘍症候群におけるpNETの発生抑制効果を臨床的に示された薬剤はまだない。我々が開発したグルカゴン遺伝子ノックアウトマウスにおいてはpNETに組織学的また、生物学的態度が酷似した腫瘍が発生する。このモデルマウスを用いて、pNETの発生さらに転移に至る分子生物学的過程の検討、各種分子標的薬剤の治療効果の検討、さらに発生予防を期待できる薬剤の効果を検討した。 平成28年度以降の研究計画に挙げた、継代維持されているグルカゴン遺伝子ノックアウトマウスの膵島細胞の悪性化における細胞内遺伝子発現を網羅的に検討するテーマについては、マイクロアレイによる検討は行えなかった。また、EMT抑制による転移抑制効果についても、mTOR阻害剤以外のEMTを抑制する薬剤をマウスに投与を行う段階までには達せずに研究期間が終了した。また、血管新生阻害効果を持つ薬剤やpNETの発生抑制効果が示唆されている薬剤の効果を検討することも期間内にはできなかった。 研究期間を通して、mTOR阻害剤であるエベロリムス投与によりpNETの発生予防効果を認め、その機序を免疫染色等により検討できた。結果については現在論文作成中である。
|