研究実績の概要 |
①研究開始時より我々は、乳癌臨床検体(針生検または手術標本)よりgentle MACS dissociatorを用いて腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を分離・回収し、CD3, 4, 8, 25, 45RA, FOXP3蛍光抗体を用いたflow cytometryによるTILにおけるTregの機能解析を行う実験手技を検討し確立してきた。これまでに約60乳癌症例についてTILのTreg機能解析を施行し、これまでの報告(Shimon Sakaguchi, Nature Review 2014, Hiroyoshi Nishikawa, Int J Cancer 2010)と同様にTregの機能解析手技を確立した。結果、乳癌組織においては免疫抑制に対して強力な作用をしめるFrIIの分画が多く認められることが確認された。現在、HER2陽性乳がんにおけるTregの機能解析結果と臨床病理学的因子(病期・悪性度・subtype・術前化学療法の病理学的治療効果)との相関について検討中である。 ②がん治療におけるimmunocheck pointを標的とした薬物療法として、PD-1/PD-L1に対する分子標的治療薬が最有力な臨床的治療効果を示している。PD-1/PD-L1標的薬の効果予測因子としてPD-L1発現が有望であり(Borghaei H, N Engl J Med 2015)、乳癌におけるPD-L1発現の標準的検査方法の確立が重要である。しかしながらこれまでの乳癌組織におけるPD-L1発現解析方法は各施設により異なっており確立した手技は無い。現在我々は、広く用いられている全自動染色システム(ベンタナ ベンチマーク ULTRA)を用いた乳癌組織におけるPD-L1発現の半定量的評価を進めており、乳癌組織におけるPD-L1発現と臨床病理学的因子との相関を明らかとする。
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