乳癌の70-80%はestrogen receptor (ER)を発現し、エストロゲンがERに結合することでエストロゲン依存性に増殖する。そのためエストロゲン枯渇を目的とした内分泌療法は乳癌の有効な治療法であるが、この治療を長期間施行された患者の多くが耐性を獲得し腫瘍増大を認める。このような内分泌療法耐性患者にエストロゲン(エチニルエストラジオール)を投与すると逆に腫瘍縮小を認めることがある。しかし、このエスロトゲン付加療法の分子メカニズムや適応の詳細は未だ不明である。 本研究では、エストロゲン付加療法を受けた乳癌例の治療前後の腫瘍ならびに血液サンプルの遺伝子発現や変異の解析を通して、内分泌療法耐性乳癌において新規治療となりうるエストロゲン療法の分子メカニズムの解明ならびに治療効果を予測する因子の解明を目指した。 ① 内分泌療法抵性乳癌に対する逐次内分泌療法後のエチニルエストラジオール治療の臨床試験」(UMIN000002831)、「エストロゲン療法に抵抗性となった閉経後転移乳癌におけるアロマターゼ阻害薬とフルベストラントの有用性の比較検討」(UMIN 000013890)にて臨床試験を行っており、これらの症例から、転移巣、血液検体を経時的に収集し、エストロゲン療法の効果予測について検討した。 ② エストロゲン使用症例の血液を用いた予測因子の解析:様々な内分泌療法施行症例に対し、投与前の血液、転移病巣の生検を行い、ctDNAによる、リキッドバイオプシーを試み、ESR1変異がctDNAで確認できるような症例では、エストロゲン療法が無効であることが判明した。
|