当研究室において、糖鎖抗原MECA-79発現が胃癌の予後不良および遠隔転移に有意に関連することを以前に報告している。MECA-79糖鎖抗原の構造的・機能的特徴からは、多くの固形癌に普遍的な腫瘍マーカーとなり得る可能性が強く示唆されると考えている。本研究では、主要な固形癌であり、CA15-3、NCC-ST-439などの糖鎖マーカーが日常臨床で頻用されている乳癌を対象として各種検討を行った。従って、当糖鎖構造の新規の乳癌バイオマーカーとしての意義、臨床的・生物学的意義を検討するものである。
乳癌において、MECA-79の臨床的意義を手術摘出標本を用いて免疫組織化学的に検討し、また乳癌培養細胞株を用いてMECA-79発現をフローサイトメトリーなどにより検討した。乳癌約100例のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片を用いており、一部の標本において、乳癌細胞の細胞膜あるいは細胞質に発現が認められている。並行して臨床病理学的な関連について統計学的な検討を進めた。しかし胃癌や大腸癌を主とした解析においてMECA-79発現が20-30%程度の症例に見られ、臨床転帰や既知の臨床因子との関連が認められたのに対し、乳癌組織での陽性率は数%程度と低く、フローサイトメトリーを用いた培養細胞株での解析でも同様の傾向であることがわかった。乳癌における生物学的・臨床的意義の解明をさらに進めている。
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