研究課題
・昨年度に引き続き、メカニズム探索のための細胞実験を中心に研究を実施した。ホルモン療法の耐性化に関連する膜レセプターとしてHERファミリーの存在が知られているが、このうちのHER3のタンパク質分解機構に関して女性ホルモンであるエストラジオールが促進的に作用することを見いだした。またプロテアソーム阻害剤 エポキソマイシンやライソソーム阻害剤クロロキンなどを用いた分解経路阻害実験から、HER3の定常状態での分解はユビキチンプロテオソーム経路によっておこなわれていると判断されるが、この分解機構にエストロゲン受容体(ER)が直接的に関与する可能性を示唆するデーターを得ている。これまで、ホルモン陽性乳癌細胞におけるHER3とERの相互作用に関しての研究報告は少なく、ホルモン療法耐性化におけるこの機構の関与も含めて、今後の研究を継続していく。これらの成果については、2017年度の日本乳癌学会総会、および日本癌学会総会において発表する予定である。・本研究の目的の一つである、患者検体を用いたトランスレーショナルリサーチとしては、ホルモン陽性転移性進行乳癌を対象にした臨床試験JBCRG M04試験(1次登患者数160名)における附随研究として実施している、患者血液検体集積については、2017年4月時点で366本の血漿サンプルが参加施設より回収、蓄積されている。試験治療継続中の今後の集積分を加えて最終的には約450本のサンプルが次年度以降の測定対象となる予定である。
2: おおむね順調に進展している
計画立案時の患者検体解析スケジュールからは外れているものの、本年度はメカニズム研究においての進捗が予定をこえるスピードで得られており、全体としては予定どおりの進捗と判断した。将来の解析対象になる患者血漿サンプルは予定どおり集積できている。
実験環境が整備され、共同研究施設との連携も継続的に実施しており、研究推進環境としては問題ないと考えている。患者検体での検証を最終年度である来年度で実施できるかについてはまだ不確定な部分があるが、次年度以降の外部資金の獲得への準備もおこない、継続的な研究が実施できるよう務めていく。
おおよそ予定通りの予算執行ができているが、試薬等の選定で経済的なものを購入できたことなどから当初計画より支出を抑えることができたため。
来年度は成果の発表を伴う学会報告を予定しており、旅費などの執行もおこなう。外注検査費用として計上していた予算については、今後の研究進捗状況にあわせて判断していく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Breast Cancer
巻: 23 ページ: 1-3
BMC Cancer
巻: 16 ページ: -
10.1186/s12885-016-2270-9.