研究課題/領域番号 |
15K10065
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 章 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40275540)
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研究分担者 |
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肥満症 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肥満外科手術 / 腸内細菌 / ヘパトカイン |
研究実績の概要 |
本研究は、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)を施行した高度肥満症患者を対象として、LSG後のインスリン抵抗性と肝線維化の変化を解析することを目的とした。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を合併した患者に対しては、術後の超音波下肝生検で肝線維化の変化を検討した。平成28年度は、1)内臓・皮下脂肪面積の測定、2) 異所性脂肪量の測定、3) レプチン、アディポカイン、75gブドウ糖負荷試験によるインスリン、血糖、GLP-1値、4)肝線維化マーカー値、5)術中肝生検による肝組織診断、6)16Sメタゲノム解析による口腔内・腸内細菌叢の変化、7)酸化ストレスマーカーとヘパトカイン値について症例集積を行った。 LSG54例中、NASH合併は42例(77%)に認めた。患者背景(平均値)は、年齢46.1歳、初診時BMI 44 kg/m2、肥満関連健康障害として高血圧83%、2型糖尿病76%、脂質異常症64%を認めた。LSG後1年の超過体重減少率は46.7%であった。検査値(初診/術後1年)は、レプチン(35.3/14.1 ng/mL,p<0.001)、HbA1c(7.2/5.7%, p<0.001)、HOMA-IR(6.3/1.7,p=0.002) は、術後1年に有意な低下した。腹部CTによる肝容積(2,259/1,620 ml, p<0.001)と内臓脂肪量(277/151 cm2,p<0.001)も、術後1年に有意な減少を認めた。GLP-1値は、初診時15.0 pmol/Lに比較して、術後1か月は61.5 pmol/Lと有意に増加した(p<0.05)。術後2年を経過したNASH 4例では、Brunt分類による線維化は全例が改善した。LSG後には減量に伴い内臓脂肪と異所性脂肪量の減少を認め、NASHの発症・進展に関与するアディポカイン、インスリン抵抗性、組織学的所見の改善が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに高度肥満症71名にLSGを施行した。LSG時の肝生検でNASHと診断された42例について、術後の超音波下肝生検で肝線維化の程度と改善度を経時的に検討できた。肥満2型糖尿病患者ではNASH合併を高率に認めたが、LSG後には内臓脂肪面積、肝容積が有意に減少し、糖尿病の改善率が高かった。また、NASHの発症・進展に関与するアディポカイン、酸化ストレス、炎症所見、インスリン抵抗性、組織学的所見の改善が認められた。 本研究の成果は、国内・海外学会発表と和文・英文論文で報告しており、当初の計画とおり、おおむね順調に進展している。。
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今後の研究の推進方策 |
肥満2型糖尿病患者ではNASHの合併が高率なこと、肥満2型糖尿病に対するLSGの改善率は良好であることなどの成果について、申請者のホームページ上や学会発表で積極的に配信する。また、高度肥満症では、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、脂質異常症、脳梗塞、冠動脈疾患などの肥満関連健康障害合併が高率であることを肥満症治療の関連職種に周知し、症例の集積を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象となる患者数が不足したために、予定していた物品費の支出が少なくなったために、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
症例集積により、検査数が増える見込みであり、次年度使用額を使用する。
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