研究実績の概要 |
本研究は、グレリン産生細胞が多く存在する胃穹窿部を切除する術式である腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy, LSG)を施行した高度肥満症74例を対象とした。術中肝生検で非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis, NASH)と診断された患者に対して、術後に超音波下肝生検を施行し、肝組織診断の変化を検討した。臨床・検査成績は前向きに登録されたデータベースから解析した。術中肝生検を施行した症例は63例で、非アルコール性脂肪性肝疾患の合併は60例(95%)、NASH合併は51例(80%)と高率であった。初診時平均体重118.6㎏、平均BMI 43.1 kg/m2で、平均超過体重減少率は術後1年57.0%、2年59.2%であった。レプチン(33.6/13.2 ng/mL, p<0.001)、アディポネクチン(2.3/5.6 μg/mL, p=0.008)、内臓脂肪(282/145 cm2, p<0.001)、肝容積(2,275/1,635 mL, p<0.001)は有意に改善した。肝生検による平均NAS score(術中/術後1年/2年)では、脂肪化(1.7/0.8/0.5)、炎症細胞浸潤(1.5/1.0/0.5)、肝細胞風船様変性(1.6/0.5/0.2)は術後に改善を認めた。Brunt分類による線維化は、術後1年で改善7例、不変2例、術後2年で改善6例、不変1例あった。術中肝生検で線維化を有する患者では、肝の脂肪沈着が多く、風船様肝細胞が多く観察された。Brunt stageが不変な患者は、術中肝生検で風船様肝細胞を有する患者で多かった。LSG後には、体重減少に伴い組織学的所見の改善が認められ、風船様変性が線維化改善に関与している可能性が示唆された。
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