研究課題
前年度までに、アロマターゼ阻害剤による内分泌療法により、癌細胞にオートファジーが誘導されアポトーシスは減少すること、また間質のオートファジーが治療抵抗性に関与していることを報告した。今回、内分泌療法(アロマターゼ阻害剤)の効果増強を目指した新たな治療である術前化学内分泌療法(アロマターゼ阻害剤+経口シクロフォスファマイド)の臨床試験検体を用いて、細胞死の態様、間質応答、また、間質におけるオートファジーの治療反応性への影響について検討した。化学内分泌療法では、内分泌療法と同様に、癌細胞におけるオートファジーの増加が認められたが、内分泌療法では減少していたアポトーシスに関しては、化学内分泌療法では逆に増加することを発見した。さらに、これらの癌細胞のオートファジー増加、アポトーシス増加は治療反応群で高く、無反応群では低かった。間質においては、治療によりオートファジーが誘導されたが、アポトーシスの増加は認められなかった。さらに、内分泌療法抵抗性に関与していると考えられた間質のオートファジーは、化学内分泌療法では抵抗性と関係無く、これが経口シクロフォスファマイドを追加するメリットとなる可能性が考えられた。さらに、それらを基礎的に追究するため、癌細胞と間質細胞(線維芽細胞)を用いた両面共培養系を用いて、ホルモン涸渇時の、間質細胞による癌細胞への影響を検討しているが、オートファジー、エネルギー代謝を検討する上での培養条件や解析システムの最適化についての検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
術前化学内分泌療法の臨床試験検体を用いたエネルギー代謝、細胞死に関する検討は予定通り進行し、結果を得ている。現在予後との関係について解析を進めている。共培養システムを用いた解析は、条件検討がほぼすんでおり、本年度に解析を進めることが可能となっている。
臨床試験検体はサンプル数が少ないという点がある。そこで、同様の術前療法を行っている検体を使用して、より科学的意義の高い解析が行える体制を構築することが必要であり、他施設との共同研究も考慮している。細胞培養に関しては、解析にフローサイトメーターやウェスタンブロットを使用しているが、マイクロアレイなど、網羅的に解析が進む方法も検討している。
両面培養において、最適化を進めていたため、予定した量のcollagenスポンジを消耗しなかった。免疫染色の抗体が予定より感度が高く、抗体の使用量を節約できた。
両面培養の解析が進むことにより、collagenスポンジの消耗が大きくなることが予想される。いままでの成果を含め、さらに論文報告予定であり、論文掲載料も必要となることが予想される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Ann Oncol.
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10.1093/annonc/mdw434.
npj Precision Oncology
巻: 1 ページ: 6
doi:10.1038/s41698-017-0006-1