本研究課題におけるテーマは、メタボリック症候群などの生活習慣病の病因と、がん発症の病因に機構に共通の基盤があることを仮定し、その機序を明らかに することである。 当初計画では慶應義塾大学病院外来の患者さんの検体を使用予定としていたが、研究代表者の転勤により研究に割けるエフォートが限定的になる等研究環境の 変化がある一方、ゲノム解析の費用の減少によるより粒度の高い解析の可能性が出てくるなど、この3年間で状況が変わったため、計画を変更し、よりよい成果 を目指してきた。 当初の研究テーマの成果を出し、さらに発展的な研究につなげるために、今回、より精緻なゲノム解析と臨床データ解析実現のために、生化学データや既往歴 など臨床情報が網羅されており、且つゲノムデータ解析の体制が確立しているKawasaki Wellbeing Cohortの検体を用いた。 その264検体について、Illumina社 Infinium Asian Screening Arrayを用いた網羅的SNP解析を行い、慢性炎症が増悪因子である生活習慣病により影響を受ける慢性腎機能障害(CKD)のマーカとしてe-GFRを用いてQTL解析をしたところ、CA10(carbonic anhydrase 10)のイントロンにあるrs117326847が見いだされた。また既往歴、家族歴から悪性疾患の有無を調べ、共通の病因としての慢性炎症の遺伝的背景と、また採血時点の慢性炎症の状態を血液検体の生化学データおよびメタボローム解析の結果から抽出し、CKDと悪性疾患発症における慢性炎症の関与について検討した。
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