研究課題/領域番号 |
15K10074
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
太田 有紀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (60387066)
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研究分担者 |
武永 美津子 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 准教授 (10236490)
大滝 正訓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20612683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 乳癌 / 微小管阻害薬 / KSP |
研究実績の概要 |
前年度の検討において、kinesin spindle protein (KSP)阻害薬であるカルバゾール誘導体KPYB10602は、乳癌細胞の細胞周期をM期で停止させ、アポトーシスを誘導した結果、細胞増殖を抑制することが示唆された。また、担癌マウスの作製を試みたところ、ヒト乳癌細胞株MCF-7に比較してMDA-MB-231でより安定的に作製することができた。 そこで本年度は、ヒト乳癌細胞株(MCF-7、MDA-MB-231)を用いてKPYB10602によるM期停止からアポトーシス誘導に至るメカニズムの検討、ならびにヒト乳癌細胞株(MDA-MB-231)を接種した免疫不全マウス(担癌マウス)に対するKPYB10602の抗腫瘍効果を検討した。 染色体の分離は、Securinが分解されることで開始されるが、KSPを阻害することによって、Securinのタンパク質分解が抑制された。このことから、染色体の分配が妨げられ、細胞周期はM期で停止したことが推察された。また、アポトーシス促進因子であるBaxの増加、ならびにアポトーシス抑制因子であるSurvivinの減少が、乳癌細胞にアポトーシスを誘導したものと考えられた。しかしながら、アポトーシスの実行因子であるCaspase-3の関与は明らかではなく、さらに詳細な検討が必要である。 また、KPYB10602を担癌マウスに腹腔内投与したところ、既存の微小管阻害薬であるパクリタキセルと同様に腫瘍体積増加速度を抑制した。観察期間において、体重減少等の有害事象は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度内において、乳癌細胞に対するKPYB10602の効果をin vitroおよびin vivoで検討し、学術論文としてまとめ、発表に至った。当初の計画の7割程度を遂行できたことから、本研究課題はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、KPYB10602の毒性、ならびに多剤との併用効果等について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文したELISAキットの納品が間に合わなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じてはいるが、すでにELISAキットは注文済みであり、納品され次第、実験に供する。平成29年度分の助成金についても、KPYB10602の毒性あるいは多剤との併用効果の検討に用いる物品費として使用する予定である。
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