研究課題
近年の研究からは、癌局所の免疫状態を評価することが、癌の再発や予後に対する重要なbiomarkerとなることが示され、一方で、有効な癌治療のためには、免疫抑制的癌微小環境の解除を目指した治療戦略が必要なことが示唆されている。本研究では現在までの研究の発展を図り、乳癌において、癌細胞と免疫抑制的癌微環境を軸とした宿主免疫システムの間の相互干渉が癌治療成績に及ぼす影響とそのメカニズムについて解析し、免疫バイオマーカーの探索を行うことを目的とする。また、その相互干渉メカニズムについて、特に癌幹細胞様細胞および薬剤耐性癌細胞を対象として解析することを目的とする。近年、各種癌における新規治療薬として抗PD-L1および抗PD-1抗体の可能性が報告され、臨床応用が進んでいる。PD-L1は、癌細胞の表面に発現しており、T細胞の表面に発現するPD-1受容体に結合し、それによってT細胞の抗腫瘍免疫活性は抑制されることになる。共同研究者の研究からは、EGFR遺伝子変異を伴う肺癌(NSCLC)においてはPD-L1が過発現しており予後因子となっていることが示された(Azuma et al. Ann Oncol 2014,)。PD-L1が受容体型チロシンキナーゼ(RTK)からのシグナルにより制御され、免疫環境へ影響を及ぼすことが示唆され、RTK阻害薬の治療効果の一機序として、PD-L1発現抑制を介した癌免疫機構への作用も考えられた。本年度は、乳癌におけるPD-L1発現を軸として、その局所免疫環境・予後との関係について、主に免疫組織学的検討を行い報告した(Okabe et al. Cancer Sci. 2017)。
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Cancer Sci.
巻: 108 ページ: 81-90
10.1111/cas.13114