研究実績の概要 |
現在、field cancerizationに強く関連すると予想される、1)飲酒・喫煙に暴露され、食道内多発病変を有する食道癌と、2)飲酒・喫煙歴のない食道癌の切除検体の正常食道粘膜および粘膜下の間質からDNAを抽出し、癌部と合わせてエピゲノム解析を行う方針とした。今回、グローバルメチレーションのマーカーとして知られるLong interspersed nuclear element(LINE-1)のメチレーションレベルを選択し、上記1)と2)での差異が認められるかを検討した。42例の食道癌切除症例切除検体をもちいて、レーザーマクロダイセクション法により非癌部間質のDNAを抽出し、Epitect bisulfite kitを用いてバイサルファイト処理を行った。間質のDNA量は極めて少なく、測定可能となるのに十分なDNAを確保するのに難渋した。そのバイサルファイトDNAを用いて、Pyrosequencing法を用いたLINE-1メチル化レベルの測定結果は、1)飲酒・喫煙暴露ありの非癌部間質のLINE-1メチレーションレベルは72.6±9.3、2)飲酒・喫煙暴露なしのそれは非癌部70.6±12.3であり、1)2)の両者に有意差を認めるには至らなかった。また、methylight PCRを用いた8種類の癌関連遺伝子(CACNA1G,CRABP1,IGF2, NEUROG1, RUNX3, SOCS1,MGMT,CHFR)のCIMP (CpG island methylator phenotype)のpercentage of methylated reference (PMR)を算出し、両者を比較検討した。なお、CIMP陽性はPMR>4としたが、両者ともにCIMP陽性を来すには至らなかった。上記より、食道扁平上皮癌のリスク因子である飲酒・喫煙の暴露の有無による食道間質のエピゲノム変化に有意な差は認められないことが示唆された。
|