研究課題
研究期間を通じて、1)乳癌発症におけるヒトganpゲノムSNPsの関与、2)乳癌臨床検体におけるヒトganpスプライシング異常、3)GANP以外のTREX2複合体分子の乳癌発症や悪性進展への関与、に関して解析を行った。1)に関して愛知県がんセンター研究所疫学・予防部との共同研究の結果、ヒトganp SNPsは非遺伝性乳癌発症リスクと強く相関することが明らかになった。この相関は乳癌のフェノタイプとは関係なく、また様々な発症リスクとも相関がみられなかった。また発症リスクのみならず乳癌患者予後との相関がみられることも判明した。2)に関しては、ヒト乳癌細胞株2種類でカルボキシル末端側で複数のタイプのスプライシング異常を認めた。さらに約50例のヒト乳癌臨床検体から抽出したmRNAを用いてシークエンス解析を行ったところ、約20%でスプライシング異常が起こっており、ほとんどがHATドメインに影響することを確認した。実際にganp遺伝子でHATドメインを欠失されたリコンビナントはHAT活性が消失することを確認した。すでに申請者らは、遺伝子欠損マウスを用いた解析でGANP欠損が乳癌発症に関わることを示しているが、この原因としてGANPのHAT活性が重要である可能性が示唆された。3)に関してヒト乳癌臨床検体を用いた解析で、PCID2もDSS1も高発現群が低発現群に比べて無再発生存期間が短縮することが明らかになった。また最近BRCA2とTREX2複合体との関連が報告されたが、BRCA2の発現レベルと無再発生存期間とは有意な相関がないことが示されている。現時点でPCID2とDSS1の発現そのものが乳癌発症に影響を与えているというデータはなく、発症そのものよりも悪性進展に関わる可能性が考えられる。
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Human Pathology
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