本年度は、主に頭頸部がんについて検討を行った。2014年2月から2017年8月までに東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科にて手術加療を行ったHNSCC症例を対象に、切除標本より正常粘膜、腫瘍組織を採取、および末梢血採血をおこなった。試料の採取に際して、東北大学倫理委員会にヒトを対象とした医学の研究、および臨床応用についての倫理審査申請し承認を得たうえで、対象症例患者から同意書を取得した(受付番号2012-1-331、2017-1-606)。8症例の腫瘍組織、正常粘膜から抽出したmiRNAを用い、マイクロアレイ解析を行った。アレイは、866種類のヒトのmiRNAプローブを含むHuman miRNA microarray kit (V3) (Agilent Technologies)を使用し、Bioconductorから提供されるパッケージAglipを用い統計ソフトRで解析した。正常組織よりも腫瘍組織で発現が2倍以上増加し、かつシグナルの強度が200以上変化しているものを抽出した。このうち、miR-21、miR-141、miR-1308では、半数(4症例)以上で共通に変化しており、頭頸部癌関連miRNAの候補と考えた。miR-21、miR-141、miR-1308に加え、以前に我々が頭頸部癌予後不良と関連するmiRNAとして同定したmiR-34aについて、HNSCC患者5名の血漿中の濃度を定量した。定量に当たり、既知量のC. elegans miR-39 mimicを加え、測定効率のコントロールとして用いた。miR-21、miR-1308および頭頸部予後不良と関連するmiRNAと報告されているmiR-34aを循環miRNAとして検出でき、腫瘍マーカーとなりうることを示した。miR-141に関してはいずれの検体においても検出されなかった。
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