研究課題
本研究の意義は、腹腔洗浄液中のCEA mRNAを定量することにより、腹膜播種病変のモニタリングを可能とすることである。平成27年度の研究計画では、全国多施設より初回の審査腹腔鏡時および化学療法の各コース開始時に腹腔洗浄液を採取し、各施設にお いてmRNAの抽出保存操作を行い冷凍保存し、定期的に東京大学に低温輸送し21検体について保存を行ったが、平成28年度の研究代表者の他施設への異動により、さらなる検体の集積が困難となった。このため、前施設にて腹腔内化学療法を行った68症例より得られた1268検体のサンプルを対象として解析を行い、研究を遂行した。平成28・29年度はこれら各腹腔洗浄液サンプル中のCEA mRNA定量測定を行った。また各症例の 追跡調査を行った。68症例中39例に胃切除が施行された。手術前CEA mRNA Indexが100未満であった20症例のMSTは41.8ヶ月、100以上の19症例のMSTは20.8ヶ月であり有意差を認めた (P<0.001)。多変量解析の結果、「術前洗浄腹水中CEA mRNA Index 100以上」は胃切除症例における独立した予後危険因子であった (P=0.042)。また手術前のCEA mRNA Indexが一度でも100未満になった32症例(MST 35.5ヶ月)は、非手術12症例(MST 13.0ヶ月)と比較して生存率に有意差が認められたが(P<0.001)、手術前に一度も100未満にならなかった7症例(MST 15ヶ月)は非手術17症例(MST 9ヶ月)と比較して生存率に有意差は認められなかった(P>0.05)。洗浄腹水中CEA mRNA定量値は腹膜播種病変の抗癌剤感受性をよく反映し、腹腔内化学療法中に手術適応を決定するための有用なバイオマーカーとなることが明らかとなった。以上の結果を国内外の学会、英文誌にて報告した。
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Annals of Surgical Oncology
巻: 24 ページ: 3345~3352
10.1245/s10434-017-5997-x