研究課題/領域番号 |
15K10087
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
羽入 隆晃 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (50719705)
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研究分担者 |
永橋 昌幸 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30743918)
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
石川 卓 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (70586940)
小杉 伸一 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (90401736)
小林 隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脂質メディエーター / スフィンゴシンキナーゼ1型 / スフィンゴシン-1-リン酸 / リンパ管新生 / リンパ節転移 / リピドミクス解析 |
研究実績の概要 |
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、脂質でありながら蛋白質と同じように細胞情報伝達物質として働く脂質メディエーターであり、申請者らは、癌が産生するS1Pがリンパ管新生を促進していることを明らかにしてきた。また予備実験として、進行胃癌症例の癌組織標本を免疫組織化学検査により抗リン酸化スフィンゴシンキナーゼ1型(SphK1)抗体を用いて染色したところ、リン酸化SphK1は癌の発育先進部やリンパ管浸潤を来たしている癌病巣に高発現していた。以上の結果から、「胃癌細胞内で活性化されたSphKが脂質メディエーターであるS1Pの産生を亢進し、リンパ管新生を促進すると共に、癌細胞の浸潤能・生存能を高めることでリンパ管浸潤に寄与している」という仮説をたて本研究を企画した。本研究の目的は、「胃癌リンパ管浸潤におけるSphKとS1Pの分子制御機構を解析し、その臨床的意義を明らかにすること」である。 平成28年度までに以下の研究・解析を行った。 (1)胃癌外科切除例に対し、免疫組織化学検査による癌および周囲組織におけるSphK1のリン酸化評価を行い、臨床病理学的因子および患者予後との関連を解析した。これにより、SphK1発現は胃癌の進行・浸潤、特にDiffuse type胃癌およびリンパ管侵襲陽性と関連していることを発見した。更に疾患特異的生存率においてSphK1陽性群は予後不良であり、SphK1によって産生されるS1Pがヒト胃癌においても進行・浸潤に重要な役割を果たしていることを報告した。本臨床研究の結果を国際学会で発表し、専門科学雑誌に現在投稿中である。 (2)胃癌切除検体の新鮮凍結検体を連携研究者であるバージニア州立大学へ送付して、質量分析によりリピドミクス解析を行った。SphKの発現や活性化、組織中S1P濃度を分析し、患者の臨床病理学的因子および予後との関連について検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SphK1の免疫組織化学検査については、昨年度の進捗状況で報告した通り、条件設定の再試行を要した分で評価・解析が遅れていたが、現在は予定数を終了して研究結果を国際学会で発表し、専門科学雑誌に現在投稿中である。 質量分析によるリピドミクス解析については、胃癌手術患者が例年の80%程度と少なく、当初の予定より解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は主に課題研究(1)(2)について論文化し、総括する。 課題研究(1) 胃癌臨床検体を用いた脂質メディエーターの臨床病理学的意義の検証:現在投稿中である胃癌症例の結果に加えて、D2-40抗体によるリンパ管染色を行い、ly病変を評価して、腫瘍周囲のリンパ管新生について評価・検証する。 課題研究(2) 質量分析によるリピドミクス解析結果を分析し、臨床病理学的因子および患者予後との関連性を解析して論文としてまとめる。
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