研究課題/領域番号 |
15K10088
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
奥村 知之 富山大学, 附属病院, 講師 (10533523)
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研究分担者 |
嶋田 裕 京都大学, 薬学研究科, 客員教授 (30216072)
塚田 一博 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (90171967) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 末梢血液循環癌細胞 / 癌幹細胞マーカー / 食道癌 / 胃癌 |
研究実績の概要 |
食道癌および胃癌症例を対象に上皮細胞マーカー(EpCAM)と癌幹細胞マーカー(p75NTRおよびCD44)との組み合わせに基づき、フローサイトメトリーを用いて末梢血液循環癌細胞(CTC)を検出しその臨床的意義について検討した。 1) P75NTRを用いた食道扁平上皮癌幹細胞の同定:食道扁平上皮癌培養細胞を用いてp75NTR陽性細胞を分離し、幹細胞関連分子(Nanog、Bmi1、p63)および上皮間葉転換マーカー分子が高発現していること、高いコロニー形成能、マウス皮下移植腫瘍形成能、および抗癌剤耐性能を示すことを確認した。さらに、p75NTR陽性/静止期細胞がp75NTR陽性細胞の中でもより高い癌幹細胞形質を示すことを見出した。2)食道癌におけるCTC検出:食道扁平上皮癌切除症例10例の術前、術後および対照として健常人10人より末梢血液10mlを採取し、単核球層を分離しEpCAM/p75NTRの組み合わせを用いてCTCを検出したところ、EpCAM陽性/p75NTR陽性細胞カウントは切除標本における静脈侵襲と有意な相関を示したのに対し、EpCAM陽性/p75NTR陰性細胞カウントはどの臨床病理学的因子との相関も示さなかった。また、セルソーターを用いて分離したEpCAM陽性/p75NTR陽性細胞は細胞診にて異形細胞であることを確認した。3)胃癌におけるCTCの検出:胃癌症例26例および対照健常人12例より末梢血液10mlを採取し1)と同様にEpCAM-CD44陽性細胞を検出したところ、EpCAM陽性/CD44陽性細胞カウントは切除標本におけるT因子および静脈侵襲と有意な相関を示した。 以上の結果から、食道癌においてはp75NTR、胃癌においてはCD44がCTCのなかでもより転移と関わる細胞サブセットのマーカーとなる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道癌および胃癌症例を対象に上皮細胞マーカー(EpCAM)と癌幹細胞マーカー(p75NTRおよびCD44)との組み合わせに基づき、フローサイトメトリーを用いて末梢血液循環癌細胞(CTC)を検出しその臨床的意義について検討し、食道癌においてはp75NTR、胃癌においてはCD44がCTCのなかでもより転移と関わる細胞サブセットのマーカーとなる可能性を示した。 当初の計画から発展して、食道扁平上皮癌培養細胞を用いてp75NTR陽性細胞を分離し、幹細胞関連分子(Nanog、Bmi1、p63)および上皮間葉転換マーカー分子が高発現していること、高いコロニー形成能、マウス皮下移植腫瘍形成能、および抗癌剤耐性能を示すことを確認した。さらに、p75NTR陽性/静止期細胞がp75NTR陽性細胞の中でもより高い癌幹細胞形質を示すことを見出した。 現在、分離したCTCの末梢血液循環癌幹細胞としての形質を検証しているが、生かした状態での細胞分離が困難であり、細胞分離回収方法の調整に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
1) P75NTRを用いた食道扁平上皮癌幹細胞の同定:p75NTR陽性/静止期細胞における癌幹細胞形質の検証を行い、静止期癌幹細胞を検出する単一表面マーカーの探索を進めるる。 2)食道癌におけるCTC検出: さらに症例数を蓄積しEpCAM/p75NTRの組み合わせを用いたCTC検出と臨床病理学的因子との相関を検討する。また、静止期癌幹細胞を検出する単一表面マーカーが得られた際には、これを用いたCTC検出を行う。 3)胃癌におけるCTCの検出:さらに症例数を蓄積しCTC検出と臨床病理学的因子との相関を検討する。 4)分離したCTCを生かして回収可能な手法を確立し、末梢血液循環癌幹細胞としての形質を検証する。 5)マイクロ流体デバイスを用いたCTC検出を行い、上述のフローサイトメトリーを用いた検出と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
セルソーターを用いた生細胞の分離に難渋し、分離細胞を用いた幹細胞形質の検討に進めていない。また、FACSを用いた解析に加えて、マイクロ流体チップを用いたCTSC補足を計画していたが、2種類の抗体を付着したマイクロ流体チップの開発に時間を要している。
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次年度使用額の使用計画 |
食道癌培養細胞から分離した静止期幹細胞を用いたマイクロアレイ解析から、幹細胞マーカーとして有望な単一分子を複数見出しており、この分子を用いたCTC検出と分離を開始する。
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