検討個体数:術後1週間以上生存したラット106匹を対象に検討を行った。70匹に普通飼料を投与(コントロール群)、36匹にLOX阻害剤であるプランルカストを投与(プランルカスト群)した。実験経過中にコントロール群の5匹とプランルカスト群の2匹が死亡したため検討から除外した。死因は栄養障害や肺炎などであり、プランルカスト投与との関連は認めなかった。 病理組織学的検討:逆流性食道炎発生率はコントロール群・プランルカスト群ともに100%、プランルカストで程度は比較的軽度であった。バレット上皮発生率はコントロール群;94%、プランルカスト群;69%、プランルカスト投与で有意に発生が抑制されていた。食道腺癌発生率はコントロール群;69%、プランルカスト群;15%、プランルカスト投与で有意に発生が抑制されていた。 免疫組織学的検討:組織増殖活性(Ki-67免疫染色)は正常粘膜に比し両群とも亢進、プランルカスト投与で有意に抑制されていた。アポトーシス(TUNEL法)は正常粘膜に比し両群とも亢進、プランルカスト投与で有意に増加していた。LOX発現(5-LOX免疫染色)は正常粘膜に比し両群とも亢進、群間に差を認めなかった。浸潤肥満細胞数(トルイジンブルー染色)は群間に差を認めなかった。浸潤好酸球数(HE染色)はプランルカスト群で少なかったが、有意差にはいたらなかった。浸潤マクロファージ数(CD68免疫染色)はプランルカスト群で有意に減少していた。 プランルカスト投与により、前癌病変であるバレット上皮・食道腺癌の発生が抑制された。LOX阻害により消化液逆流に伴う慢性的な炎症状態を抑制することが、発癌抑制につながったと考えられる。炎症細胞の中でも特にマクロファージの浸潤が抑制されていた。マクロファージによる過剰な組織増殖刺激が発癌要因の一つと考えられた。
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