研究課題/領域番号 |
15K10092
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
深谷 昌秀 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (10420382)
|
研究分担者 |
山口 淳平 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00566987)
梛野 正人 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20237564)
國料 俊男 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60378023)
横山 幸浩 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80378091)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | RAGE / 術後感染症 |
研究実績の概要 |
高度な侵襲を伴う消化器外科手術では、術中に誘発されたバクテリアルトランスロケーションから発症する術後敗血症が手術関連死亡の原因の1つである。RAGE (Receptor for advanced glycation end products)は、イムノグロブリンスーパーファミリー分子の受容体タンパク質の一つであり、様々な病態に関与している。またビサボロールは単環式セスキテルペノイドの一種であり、RAGEのリガンドであるAGEの生成阻害作用を有している。 ラット胆管結紮モデルにおけるRAGE発現解析:閉塞性黄疸の動物モデルであるラット胆管結紮に肝虚血(20分)/再潅流を付加した胆管結紮後/肝虚血再潅流モデルと胆管結紮のみの比較では胆管結紮後/肝虚血再潅流モデルにおいて肝障害が重篤化していた。また胆管結紮1日モデルと7日モデルでは、7日モデルにおいて肝障害が重篤化していた。しかし、肝組織でのRAGE(Receptor for advanced glycation end products)の発現では胆管結紮のみの場合と比較して有意差を認めなかった。前年度の研究において胆管結紮のみと結紮7日後/肝虚血再潅流モデルにTLR4阻害剤の投与を行なった場合のRAGEの発現で有意差を認めなかったため、異なるTLR4阻害剤による検討を行った。TLR4阻害剤の非投与と比較してTLR4阻害剤投与によるRAGEの発現の減弱はPCRにて認めることができなかった。 ラット胆管空腸モデルにおける検討:ラット肝切除モデルとラット肝切除/胆管空腸モデルにおいて肝切除後4日、7日目の肝組織で炎症関連因子であるET(endothelin )-1やICAM(Intercellular Adhesion Molecule), VCAM(vascular cell adhesion molecule)の発現を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット胆管結紮モデルにおいて結紮期間が、肝虚血再潅流による肝障害に影響を与えることを明らかにした。また肝組織でのRAGE(Receptor for advanced glycation end products)の発現が亢進していたが、胆管閉塞の期間に影響しないことを明らかにした。しかし、RAGE活性抑制に対するビサボロール有効性に関する検討が不十分であり、やや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト切除標本におけるRAGE発現の臨床病理学的検討:名古屋大学大学院腫瘍外科にて手術施行された食道癌、胆管癌、膵癌、大腸癌の切除標本の癌部、正常部におけるRAGE発現を免疫染色にて検討する。バクテリアルトランスロケーション、敗血症の診断は血液培養などの細菌検査、血液生化学検査の結果より行う。 RAGE活性抑制に対するビサボロール有効性に関する検討:Raw細胞にビサボロールを投与した後、LPSを投与し、ビサボロール投与、非投与時における培養液中の炎症系サイトカインをMultiplexアッセイにて解析し、ビサボロールと炎症系サイトカインの関連性を明らかにする。またマウス頸静脈にカテーテルを留置し皮下にポートを留置し、マウスへのビサボロールの複数回の経静脈的投与を行ない、ビサボロールの投与後、LPSを投与し、ビサボロール投与、非投与時におけるRAGEの発現をウェスタンブロティング法、リアルタイムPCR法にて検討する。血清中の炎症系サイトカインをMultiplexアッセイにて網羅的解析し、ビサボロールと炎症系サイトカイン、RAGEとの関連性を明らかにする。2種類の敗血症モデルにビサボロールを投与しバクテリアルトランスロケーションおよび敗血症の発症阻止を検討する。敗血症の評価は、術後1時間、4時間、8時間、24時間後に採取した血液中の細菌特異的リボゾーマルRNAをRT-PCR法により測定し行う。また細菌検査、血液生化学検査による評価も行う。
|