研究課題/領域番号 |
15K10096
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
村田 聡 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90239525)
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研究分担者 |
山本 寛 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00283557)
山口 剛 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10510290)
谷 眞至 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60236677)
清水 智治 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70402708)
三宅 亨 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (70581924)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 腹腔内遊離癌細胞 / 上皮間葉転換 / 手術侵襲 / 腹膜転移 |
研究実績の概要 |
胃癌治癒手術中に術後腹膜転移形成の源となる癌細胞(分裂能、腫瘤形成能を有する)が腹腔内に散布され、腹膜再発することが、最近の研究で明らかとなった。これら術中の腹腔内散布癌細胞が腹膜転移を形成する機序を、散布癌細胞の分化と手術による癌微小環境の変化に着目し、癌幹細胞様細胞の存在や分化癌細胞の脱分化、および、癌細胞や腹膜中皮細胞の上皮間葉転換(EMT)の側面から検討することを目的に研究を進めてきた。 ① 手術中の腹膜転移発症機序の解明として、 1) 腹腔内散布癌細胞には、癌幹細胞様の腹膜転移形成に有利な細胞が含まれているかどうかを検討した。胃癌手術中に散布される腹腔内散布癌細胞を用いて、CD44 (CD44s, CD44v6, CD44v9)の発現を免疫細胞染色およびフォローサイトメトリーで調べ、癌幹細胞様細胞の存在を調べた。癌幹細胞の特徴であるsphere 形成やES細胞特異的遺伝子の発現を調べた。 2)消化器癌手術侵襲により、分化した癌細胞に脱分化や上皮間葉転換(EMT)が起こり、腹膜転移形成するのかどうかを検討した。また同時に腹膜中皮にEMT が起こるのかを検討した。1. 癌手術操作による局所環境の変化を、手術開始時の腹腔内洗浄液と、腹腔内留置ドレーン排液の各種サイトカインの経時的変化を調べた。2. 胃癌細胞株(SGC7901)や術中散布癌細胞の幹細胞様細胞を手術侵襲関連サイトカイン(TGF-βなど)と共にin vitro 培養し、脱分化の変化、紡錘状への細胞形態変化、さらにEMT マーカー(E-カドヘリン発現、Vimentin 発現、αSMA 発現など)によるEMT 誘導を調べた。3. 大網から採取した腹膜中皮細胞(HPMC)について、TGF-β添加による、上皮マーカー(E-カドヘリンなど)や間葉系表面マーカー(vimentin など)の変化を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に解決すべき課題であった、①術中散布癌細胞には、癌幹細胞様の、腹膜転移形成能のある細胞が含まれているのか?②. 癌手術による手術局所の炎症は、術中散布癌細胞や腹膜中皮細胞に、転移形成に重要な上皮間葉転換(EMT)を誘導するのか? ③. 手術局所の炎症は、分化癌細胞の脱分化を誘導し、癌幹細胞様の変化を引き起こすのか? などについて、おおむね順調に研究を進めることができたと考えます。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、手術中の腹膜転移発症機序の解明のために、癌手術後の腹腔内環境での癌細胞の脱分化やEMT 誘導の検討する。具体的には、胃癌、膵癌術後の腹腔内留置ドレーンからの排液を経時採取し、術後ドレーン排液と胃癌細胞株、膵癌細胞株、あるいは、腹腔内散布癌細胞とを共培養し、幹細胞様癌細胞の増加(脱分化誘導)の有無や、EMT 誘導を調べる。 マウス腹腔内での手術侵襲下における腹膜中皮と癌細胞のEMT 誘導と、温熱よる抑制を検討する。具体的には、マウス腹腔内において、TGF-β存在下で、腹膜中皮と癌細胞の形態変化及びEMT マーカーの変化を調べる。さらにマウス腹腔内において、TGF-β存在下での腹腔内散布癌細胞の生着率増加と、腹腔内を温熱環境(42℃)にした時の、癌細胞生着率低下を調べる。 腹腔内温熱化学療法(HIPEC)による、腹腔内の癌微小環境が変化と、癌細胞の腹膜腫瘤形成能への影響を、温熱環境下での、癌細胞および腹膜中皮細胞の脱分化誘導抑制やEMT 誘導抑制で調べる。 HIPEC による癌微小環境の変化と癌細胞の幹細胞性獲得の抑制・EMT の抑制を検討するために、HIPEC 施行後の胃癌患者のドレーン排液を経時採取し、HIPEC 術後ドレーン排液と胃癌細胞株、あるいは、腹腔内散布癌細胞とを共培養して、癌幹細胞様細胞の増加や、EMT誘導を、非HIPEC 症例と比較する。 腹膜中皮が腹腔内癌細胞に及ぼす影響を検討するために、胃癌細胞株と胃癌手術患者の大網由来腹膜中皮(HPMC)(温熱群または非温熱群)を共培養し、癌細胞の形態的変化と増殖能力を比較する。温熱群と非温熱群それぞれのHPMC と共培養した胃癌細胞株を、スキッドマウスの腹腔内へ投与し、腹膜播種形成能を評価し、比較する。 さらに、手術中の肝転移発症機序の解明と、その治療としてHIPEC の有効性の検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りに使用できましたが、抗体の使用量が予定より少量ですみ、追加の抗体購入を次年度で行うことになったため、次年度使用額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
癌幹細胞を分離し、炎症による癌細胞の脱分化を観察するための抗体追加購入にあてたい。
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