【はじめに】食道癌の化学療法では消化管毒性は患者のQOLを低下させ大きな問題点となる。消化管毒性と血中diamine oxidase(DAO)活性の関連性について報告されている。今回化学療法の消化管毒性とDAOの遺伝子多型の関連性について検討を行った。 【対象と方法】対象は化学療法(CDDP+5Fu)を行った食道癌患者115例とした。投与前の血清におけるDAO遺伝子多型のうちC47T (Thr16Met : rs10156191) とC4105G (His645Asp : rs1049793)を解析した。 【結果】DAO遺伝子多型はThr16MetはC/Cが90例(78.2%)、C/Tが25例(21.8%)であった。His645AspはC/Cが24例(24.1%)C/Gが46例(35.4%)G/Gが45例(40.5%)であった。DAO活性Thr16Met のC/Cが5.0、C/Tが5.18で、His645AspはC/Cが4.76、C/Gが5.25、G/Gが5.19でSNPとDAO活性の関連性についてはあきらかな差は認めなかった。消化管毒性を認めた症例は45例(47.8%)であったが、Thr16Met のHis645AspのC/Gが22/32例で消化管毒性を高頻度に認めていた(p=0.03)。 【考察】DAOは、摂取されたヒスタミンを代謝するための主な酵素で、DAOのSNPsとヒスタミン不耐性との間の関連性が報告されている。嘔吐中枢の内因性神経伝達物質にセロトニンやドーパミンとともにヒスタミンがあるので、DAOのSNPsにより消化管毒性の出現頻度に有意差があるため、ヒスタミンを介して嘔吐を誘発する機序のリスクとなっている可能性がある。 【結語】DAOの遺伝子多型の検討の結果、His645AspのSNPにおいて消化管毒性発現との関連性が示唆された。
|