研究課題
酸化ストレス等で障害されたミトコンドリアを選択的に除去する管理機構(MQC)には、不良ミトコンドリア消化機構(マイトファジー)と不良ミトコンドリア内へのリソソームの直接移入→酸化タンパク消化機構(MALM)が存在する。スキルス胃癌では、このMQCの破綻によって低酸素下で不良ミトコンドリアからROSが過剰に産生され、さらにROSはHIF-1αを誘導・安定化し癌悪性度を亢進させる、と考えられる。研究代表者らは、スキルス胃癌細胞(44As3、58As9)は非スキルス胃癌細胞(MKN45)と異なり、低酸素下でHIF-1αが誘導されミトコンドリアでROSが蓄積することを示した。さらにROS阻害剤(NAC)を投与すると、低酸素下でのROS産生が低下しHIF-1α発現も抑制された。一方でHIF-1αをノックダウンすると低酸素でのROS産生が低下し、ROSとHIF-1αが相互に作用していると考えられた。続いて、オートファジーマーカーの発現解析及び蛍光顕微鏡による局在解析を行い、さらにはマイトファジー関連遺伝子およびMALM関連遺伝子の発現をRT-PCR, Western blotで解析すると、58As9でMALM関連遺伝子のMieap発現が特異的に欠失していた。Mieap発現欠失による低酸素環境下MQC(MALM)機構の破綻が、胃癌細胞の悪性度亢進を惹起する可能性が示唆された。MQCをミトコンドリア/リソソームマーカー標識で評価すると、低酸素下58As9ではMKN45と異なり、ミトコンドリアにリソソーム集積を認めずMQC障害が示唆された。一方、MKN45をリソソーム阻害剤クロロキン処理すると低酸素下ミトコンドリアROS蓄積とともに浸潤能亢進が惹起された。さらにMKN45でMieapノックダウンすると、ミトコンドリアROSの増加と浸潤細胞の増加を認めた。
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