研究課題
食道扁平上皮癌の細胞株であるTE-1とKYSE30に5AZA処理することでDNAのメチル化レベルを低下する。5AZA処理で上昇するmicroRNAの一つであるmiR-145に注目し実験を進めた。はじめにPyrosequencingを用いて、miR-145のプロモーターのメチル化を測定方法をデザインした。次に、所有する10個の食道扁平上皮癌細胞株を5AZA処理することでmiR-145はプロモーター領域のメチル化が低下し、発現が上昇することを確認した。臨床検体を用いて検討すると、癌組織において正常部と比較してmiR-145のプロモーター領域は高メチル化であり、発現は低下していた。癌細胞においてmiR-145はプロモーター領域のメチル化により発現が抑制されていることが示唆された。根治的切除がなされた食道扁平上皮癌105例においてmiR-145の発現量と検討を行った。高発現群と低発現群との間に全生存率(log rank p = 0.58) 、無再発生存率(log rank p = 0.80)に有意な差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
食道扁平上皮癌においてメチル化により制御されるmicroRNA の解明を目的に実験を進めている。食道扁平上皮癌でmiR-145がプロモーター領域のメチル化により発現が制御されていることを初めて報告した。
食道扁平上皮癌細胞を5AZA処理することで発現が変化するmicroRNAをmicroarrayにより検索したが、miR-145以外にもプロモーターのメチル化により発現がコントロールされているmicroRNAがある。その中から、食道扁平上皮癌の悪性度と関係している可能性があるmicroRNAを検討する必要がある。さらに、プロモーターのメチル化に加えて、ゲノム全体のメチル化もmicroRNAの発現に影響している可能性があり、研究を進めていく方針である。
医局保管の消耗品を使用できたため。
次年度は、プロモーターのメチル化により発現がコントロールされているmiR-145以外のmicroRNAで食道扁平上皮癌の悪性度と関係している可能性があるものが存在するかを検討する。さらに、プロモーターのメチル化に加えて、ゲノム全体のメチル化についても検討する予定であり、今年度より広範囲にわたる実験が必要となる。そのため、研究費は実験試薬等の購入費及び、データ管理、試料作成等にかかる人件費に充てる予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Anticancer Res
巻: 35(9) ページ: 4617-24