研究課題
平成28年度はFdxr発現と治療抵抗性のメカニズム解明を目的とした研究が行われた.Fdxr高発現食道癌細胞および低発現食道癌細胞を用いてDNAマイクロアレイを行い、Fdxr低発現細胞におけるCRCT1,LCE3D,S100A7, CEACAM6,SOX9遺伝子異常発現を確認した。まずS100A7, CEACAM6,SOX9において、50例の食道癌切除検体標本を用いたmRNAの発現実験が行われた。非癌部に比較して癌部でmRNAが上昇している割合はS100A7, CEACAM6,SOX9でそれぞれ40、10、60%であった。そこで、SOX9に関して食道癌切除検体標本175例を用いて蛋白発現を解析したところ、175例中110例(63%)において腫瘍細胞の核濃染像が確認された。その発現割合は原発巣の深達度、脈管侵襲、および腫瘍stageの進行度と有意に関係していた。さらにSOX9発現陽性者における生存率は陰性者と比較して有意に不良であった。以上から食道癌Fdxrの低発現とSOX9の高発現に関連性を有することが示され、さらにSOX9発現は予後因子であることも確認された。次に、培養細胞における検討では、Spheroid colony assayによりFdxr低発現消化器癌細胞から形成されたスフェアにおいて、DNA障害をきたした癌細胞がアポトーシスを起こす過程で必要である活性酸素の誘導の指標である8OHdG発現亢進が確認され、Fdxr低発現細胞では活性酸素産生が抑制され、細胞死を誘導困難にしていることが確認され、Fdxr発現の発現とアポトーシスのメカニズムを一部解明することができた.
2: おおむね順調に進展している
ノックアウト細胞の作製は困難でったため、当初の計画に沿ってsi-RNAの用いた系に変更して研究を進めているが、平成28年度に計画した実験項目に関しておおむね良好に結果が得られた。
Fdxr発現評価による治療感受性症例の予測および治療抵抗性症例に対する治療法の検討を目的に、組織検体を用いたマーカー発現による奏功例,非奏功例の予測確認を行う.現在までに化学放射線療法後切除された症例の術前生検組織および切除標本の残存癌細胞においてFdxrおよび関連幹細胞マーカー因子発現を、治療前生検組織を用いてreal-time RT-PCR法および免疫染色法により確認し、術前化学放射線療法の効果と対比する.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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