研究課題/領域番号 |
15K10109
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
石神 純也 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (90325803)
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研究分担者 |
盛 真一郎 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (00620519)
飯野 聡 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (80598003)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消化器癌 / 腫瘍間質 |
研究実績の概要 |
近年の抗がん剤や分子標的薬剤治療の進歩により、切除不能高度進行消化器癌化療が奏効し、画像上腫瘍の縮小がみられ、根治切除可能症例が散見されるようになってきた。その切除標本に腫瘍の遺残が見られ、この腫瘍は繰り返す化療後の遺残腫瘍は治療抵抗性の腫瘍であり、いったん遺残細胞が治療耐性を獲得した病変であり、転移再発を来す場合、これら細胞が原因となりうる。この遺残病変こそ化療効果のない生物学的悪性度のもっとも高い腫瘍群とみなされ、幹細胞様のキャラクターや生物学的悪性度の高い性質を持っていることが予想されるものの、実際 消化器癌臨床例で検討した報告は少ない。一方、化療耐性を獲得した腫瘍において腫瘍間質(ニッチ)の環境も通常と大きく異なっており、宿主が有する抗腫瘍免疫機能に対して負に採用することが指摘されており、遺残腫瘍の維持、増殖に腫瘍間質の要因も強く関わっていることが予想される。昨今、immunocheck point阻害薬がメラノーマや肺癌で著効し、臨床上、使用できるようになってきた。消化器癌でも化学療法耐性切除不能胃癌に著効することが示され、治療薬の選択肢の一つとなりうる。腫瘍間質における炎症細胞上のPD1やPDL1発現程度と抗PD1抗体の治療効果と強く関連することが報告されており。この高額な薬剤のレスポンダーの拾い上げに癌間質の情報が有用である可能性が指摘された。今回われわれは消化器癌症例でしばしば経験される化学療法中、治療後の残存腫瘍とその腫瘍間質(特に腫瘍間質に浸潤した免疫担当細胞)のキャラクターを解析することで、これら化療により遺残、再燃した難治性腫瘍の制御・克服に向けた新たな治療戦略を立てていきたいと研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象は化療を行った後、奏効を確認して切除を行った進行胃癌62例の腫瘍及び腫瘍間質の癌幹細胞マーカーと免疫抑制マーカーの発現を組織生検で検討した。各症例の化療評価はCR2例、PR37例、SD11例、PD12例であった。幹細胞のマーカーとしてZEB-1、NRF-2を、免疫抑制性マーカーとしてfoxp3陽性細胞の浸潤を免疫組織学的に検討した。NRF-2陽性症例は陰性症例に比較して有意に予後不良であり、化療奏効程度と負の関連を認めた。現在再発を含めた予後の解析を行っている。 テーマに関連した実験を学会発表や論文作成に向けて結果の考察などフィードバックを適宜行っている。昨年終了した前回の研究課題で形成されたデータに基づいた論文も作成され、現在投稿中である。成果は確実に得られており、消化器外科学会で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨今immunocheck point阻害薬がメラノーマや肺癌で使用されるようになり、化学療法耐性切除不能胃癌に著効することが示された。腫瘍間質における炎症細胞上のPD1やPDL1発現が治療効果と強く関連することが報告されており、化学療法後の腫瘍間質の情報はますます重要となることが予想される。本研究がそういった症例の治療効果判定に利用できるようにさらに研究を重ねていきたい。業績をまとめ、論文投稿は勿論のこと、前回科学研究費を取得したテーマについての論文作成や学会発表も継続して行っており、確実に業績・成果を上げていきたいと考えている。
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