研究実績の概要 |
昨年度は,食道癌および胃癌に対して臨床検体より血漿フィブリノゲン値の測定を行った.また,電子カルテより臨床病理学的な項目の抽出を行い,胃癌と食道癌におけるフィブリノゲンの臨床病理学的意義および予後に対する検討を行った.結果より術前の血漿フィブリノゲンが高値である症例は低値の症例と比較して,リンパ節転移が多く,予後が不良であることがわかった.その内容について学会発表および論文作成を行い,食道癌に関しては論文を投稿し受理された.また,胃癌に対しても今後論文作成の予定である.さらに臨床病理学的な結果より血漿フィブリノゲンが高値であることがリンパ節転移や予後不良であるメカニズムを基礎研究で解明していく予定である.まず,フィブリノゲン投与による癌細胞内のNMLCのリン酸化,仮足形成,浸潤の誘導を確認する.癌細胞におけるフィブリノゲン受容体の証明および受容体の阻害剤を同定し,さらにその阻害剤またはミオシン軽鎖リン酸化酵素阻害剤(Y-27632, ML-7)を投与することにより,仮足形成,細胞運動および転移の抑制を検討する.次にフィブリノゲンノックアウトマウスと野生型マウスを用いて担癌マウスを作製し,それぞれのマウスにおける転移状況を比較検討する.最後に,同定したフィブリノゲン受容体の阻害剤やY-27632, ML-7を投与することにより,原発巣および転移巣の状態を詳細に検討する.以上,フィブリノゲンによる癌の浸潤・転移のメカニズムの解明およびフィブリノゲンの阻害による癌の浸潤・転移の制御をvitroおよびvivoの実験で検討する.
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