研究課題
癌の発生・進展には癌細胞周囲の間葉系細胞も重要な役割をもつ。癌間葉系機構には癌細胞からの上皮間葉系移行 (EMT)、癌幹細胞からの上皮系・間葉系型腫瘍細胞への分化、癌関連線維芽細胞などの宿主側細胞による癌微小環境の変化、などがあげられる。癌肉腫は癌と肉腫が混在する稀な腫瘍であるが、前述の癌間葉系機構で通常癌に比べて特殊な異常が生じていることが考えられる。食道癌肉腫症例の、病理組織学検討では粘膜固有層より浅層や進行癌深部での肉腫化は見られず、表在食道癌と粘膜筋板周囲の異常が癌肉腫発生の鍵となることが示唆された。癌腫・肉腫部を分離採取し次世代シークエンサーによる半網羅的変異解析を行う方針とした。DNA qualityから十分なdepthが得られない可能性が高く、標的遺伝子を絞ったtarget sequenceを検討した。食道癌症例で他の癌腫で頻用されるCancer Hotspot Panelを用いた解析では、1症例あたり1.2個の変異しか検出されなかったため、31遺伝子を標的とした食道癌パネルを独自にデザインした。これにより効率的に食道癌症例の遺伝子異常を検出することが可能となったため、本研究で対象とする癌肉腫の他、通常食道癌での腫瘍内のheterogeneityの解析にも応用可能である。。当初予定していた癌肉腫の部位別sequenceでは、ホルマリン固定標本材料からの解析となるため、100bp程度に断片化したDNAでは塩基配列決定が困難である。新鮮標本での検討が望ましいため、新規癌肉腫症例からの標本採取を予定している。また、ホルマリン固定標本からのシークエンスが可能な他の次世代シークエンスのプラットフォームを用いた解析も検討中である。
2: おおむね順調に進展している
食道癌肉腫症例は2000年以降症例で7症例存在した。多発食道癌を伴うもの、臨床像は様々であるが、病理組織学検討では粘膜固有層より浅層や進行癌深部での肉腫化は見られず、表在食道癌と粘膜筋板周囲が癌肉腫発生の鍵となることが示唆された。癌腫・肉腫部をそれぞれLaser microdisectionにて分離採取しDNA抽出後、TP53の変異同定を試みたが、DNA断片化が強く解析不能であった。100bp程のフラグメントへの断片化と考えられ、PCR-Sangar sequenceでの確認は省略し、直接次世代シークエンサーによる変異解析を行う方針とした。次世代シークエンサーによる網羅的(半網羅的)遺伝子変異解析ではその変異同定効率も重要となる。ホルマリン固定パラフィン材料など微量DNAからの次世代シークエンスではそのDNA qualityから十分なdepthが得られないことも多く、ある程度標的遺伝子を絞ったtarget sequenceが必要である。食道癌5症例における癌関連遺伝子50個のhotspotを標的としたCancer Hotspot Panel (CHPv2)を用いた検討では、1症例あたり1.2個の変異しか検出できなかった。そこで、食道癌で変異頻度の高い31遺伝子を標的とした食道癌パネルを独自にデザインした。本panelでは平均8.1個の変異が検出され、さらにEGFRをはじめとする複数の遺伝子のcopy数上昇も確認できた。これにより効率的に食道癌症例の遺伝子異常を検出することが可能となったため、本研究で対象とする癌肉腫の他、通常食道癌での腫瘍内のheterogeneityの解析にも応用可能である。
今回作成した食道癌パネルはPCR増幅産物の次世代シークエンスを行うAmplicon sequenceで使用可能である。当初予定していた癌肉腫の部位別sequenceでは、ホルマリン固定標本材料からの解析となるため、100bp程度に断片化したDNAでは塩基配列決定が困難である。新鮮標本での検討が望ましいため、新規癌肉腫症例からの標本採取を予定している。また、ホルマリン固定標本からのシークエンスが可能な他の次世代シークエンスのプラットフォームを用いた解析も検討中である。
54,768円の残額が生じたが、年度末に本金額で喫緊に必要な消耗品等はなかったため、次年度の経費のかかる消耗品費への充当を予定した。
次年度はホルマリン固定サンプルからの次世代シークエンスも予定しており、シークエンスにかかる費用として使われる額が多くを占める予定である。そのた、細胞実験や動物実験に使用される。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Ann Med Surg
巻: 16 (14) ページ: 29-35
10.1016/j.amsu.2017.01.016.
Int J Oncol
巻: 50 (2) ページ: 441-447
0.3892/ijo.2016.3817