研究課題
食道癌肉腫症例で臨床経過では再発病変への治療も含め特に肉腫部分で化学療法の効果を示した症例は見られなかった。食道癌肉腫に対し術前化学療法を施行し、癌部のみcomplete responseが得られ遺残した肉腫成分に対し食道切除を施行した症例について遺伝子解析を施行した。治療前内視鏡生検により得られた癌部サンプル、切除後に得られた肉腫部サンプルよりそれぞれDNAを抽出し、食道扁平上皮癌で変異を効率的に検出可能な独自デザインした食道癌パネルを用いた次世代シークエンサー (NGS)解析では、TP53 Y220C , CDKN2A D14fsの2つの変異が両成分に共通して見られたが、TP53 R280Tは癌成分にのみ見られた。Digital PCRによる解析でも肉腫成分のTP53 R280Tの変異アリル頻度 (MAF)は0%であり、NGSの検出限界による差ではなく両成分のgenetic cloneが大きく分枝していることが示唆され、この差異が化学療法効果にも影響しているものと考えられた。両成分に対し全遺伝子変異解析では、癌成分で216、肉腫成分で131の体細胞変異が見られ、このうち41変異が両成分に共通する変異であった。両成分のMAF平均値は癌部で19.7%,肉腫部で33.0%と肉腫部で高値であった。コピー数異常 (CNV)の検討では、癌部で190領域、肉腫部で571 領域のコピー数異常が認められた。以上より食道癌肉腫はsingle cell originで発症しその後体細胞変異の蓄積が優性な癌成分とCNVの蓄積が優性な肉腫成分に分枝していくことが明らかになった。肉腫成分にのみ見られる変異を検討すると肉腫発生や癌の上皮間葉系移行(EMT)で異常の報告のあるWNT5が含まれていた。今後WNT5の可逆的異常によるEMT、不可逆的変化が癌肉腫発生に寄与するという仮説について検証する。
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Annals of Medicine and Surgery
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