研究課題/領域番号 |
15K10116
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
竹内 裕也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20265838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / ケモカイン / CXCL12 / CXCR4 / IL-8 / CXCR2 / CCL5 |
研究実績の概要 |
ケモカインネットワークは各種の急性・慢性炎症性疾患や免疫疾患に対する治療標的として研究がすすめられてきたが,近年悪性腫瘍との関わりも明らかにされつつある。我々は先行研究でIL-8-CXCR2,CCL21-CCR7の発現がそれぞれ食道扁平上皮癌の予後不良因子であることを示し,本研究ではCXCL12-CXCR4の発現が同様に食道扁平上皮癌の予後不良因子であることを示した。さらに,CXCL12-CXCR4ネットワークの刺激により食道扁平上皮癌細胞の増殖能が亢進すること,ネットワークの抑制により増殖能が抑制されることを示し,論文報告した。IL-8-CXCR2ネットワークについても,CXCR2選択的阻害薬やsiRNAを用いてネットワーク抑制を行うと食道扁平上皮癌の細胞増殖が抑制されることをin vitro, in vivoの双方で示し,論文投稿準備中である。 また,食道扁平上皮癌臨床検体を用いた研究では,IL-8-CXCR2,CCL21-CCR7,CXCL12-CXCR4各々の発現が予後不良因子であるだけではなく,発現しているネットワーク数が多いほど予後不良であることを見出した。これらのケモカインネットワークの発現パターンは予後予測因子となるだけではなく,食道扁平上皮癌の治療効果予測因子となる可能性もあるため,対象となるケモカインネットワークを増やし臨床上有用なケモカインアレイを開発すべく研究中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケモカインネットワークの発現が食道扁平上皮癌の予後不良因子であると共に,新たな治療標的となり得るという仮説のもと研究を行い,IL-8-CXCR2,CCL21-CCR7,CXCL12-CXCR4の各々のケモカインネットワークについて仮説に一致する結果が得られている。平成28年度は動物モデルを用いてCXCR2阻害薬,CXCR4阻害薬のより癌細胞選択的な投与方法を検討することも計画していたが,より治療標的として優れたケモカインネットワークを同定することを目的に,計画を変更し新たなケモカインネットワークを対象に研究をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
新たな研究対象としてCCL5に着目し研究を行う。CCL5ネットワークは古くから急性炎症や慢性炎症に関与するケモカインとして知られ,関節リウマチやHIVの治療標的として研究されてきた。Oncology領域においてもCCL5発現は胃癌や乳癌の予後不良因子と報告される一方,食道扁平上皮癌に関する報告はほとんどない。そこで,食道扁平上皮癌切除検体におけるCCL5ネットワークの発現を調べ,予後や臨床病理学的因子との関連を調べる。また,食道扁平上皮癌細胞株をCCL5添加培地で培養したときに細胞増殖能が亢進するか否か,CCL5受容体の選択的AntagonistであるUK227857添加培地で培養したときに細胞増殖を抑制できるか否か検討する。さらに,CCL5を強発現させた食道扁平上皮癌細胞株をヌードマウスの皮下に注入し,UK227857により腫瘍増殖が抑制できるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費および人件費・謝金を計上したが使用せず,物品費とその他に充てたため。
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次年度使用額の使用計画 |
すべて試薬や実験動物,飼料などの消耗品に充てる予定である。
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