研究課題
腫瘍抗原に対する抗体反応を利用した腫瘍マーカーである血清p53抗体は、食道癌・大腸癌・乳癌の 3 種に対して 2007年に保険収載されてから8年が経過した。現在、同様の手法を用いてHSP70、KM-HN-1、NY-ESO-1など複数の分子に関して臨床検体を用いた研究を行っている。HSP70およびKM-HN-1cDNA の塩基配列をアミノ酸配列に変換し、MHCPred ウェブサイト (http://www.jenner.ac.uk/MHCPred/) を用いてクラスII 抗原部位を検索し、その領域を含むペプチドを人工合成した。ウエスタンブロット法にて、HSP70およびKM-HN-1cDNAを標的とする血清抗体陽性率を検討した。次に、アミノ末端にビオチンを付加しておき、予めアビジンを固相化したプレートを用いて合成ペプチ ドを特異的に結合させ、洗浄後に血清抗体と反応させ、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG 抗体を用いて血清抗体レベルを測定した(ELISA)。健常者血清に比べ患者血清の抗体レベルが有意に高いペプチドを選択した。東邦大学医療センター大森病院で入院・加療した胃癌患者の血清を文書により本人の了解を得てスクリーニング用いた。(「悪性腫瘍における新規腫瘍マーカーの探索と有用性の検討」承認番号:21-74)また、文書により了解を得た健常者の血清をコントロールとして用いた。健常者は、癌検診において固形癌を有していないと診断された50歳以上の100名である。解析対象の胃癌症例の血清は、治療前後に採取し、血清分離後にマイナス80度で凍結保存したものを使用した。Pilot study の結果は後述の学会で発表してきたが、さらなる改良を行う。
2: おおむね順調に進展している
研究計画4年間の2年目であり、当初計画に基づく研究計画を順調に実施している。
研究計画4年間の1年目は、当初計画に基づく研究計画を順調に実施できた。しかしながら、血清中のHSP70抗体やKM-HN-1抗体は、当初期待したレベルの陽性率に達しなかったため、単独で新たな腫瘍マーカーとして利用できる可能性は少ないと判断された。NY-ESO-1など他の血清抗体マーカーと併用することで、従来の抗体マーカーを凌駕する検査方法として開発できる可能性がある。研究2年目である平成28年度には、胃癌切除標本の免疫染色を行いタンパクレベルでの発現を確認する。また最適の血清抗体併用方法を探索する予定である。
平成27年度は、実験材料における消耗品などや外注検査が少なかった。現在、サンプルをプール中であり、次年度に繰り越した。
平成28年度は、多数の臨床検体のERISA測定及び免疫染色を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
Journal of gastroenterology
巻: 51-1 ページ: 30-34
DOI 10.1007/s00535-015-1078-8 / DOI 10.1007/s00535-015-1089-5
臨床消化器内科
巻: 30-7 ページ: 806-809