研究課題/領域番号 |
15K10119
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
萩原 明郎 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90198648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消化器 / 再生 / 血管新生 / 動物実験 / 大網 / 血流 / 再生足場 / 腹腔内培養 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、臨床応用可能な、20cm以上の十分な長さと蠕動運動を持つ全層・全周性食道を、イヌで再生することである。臨床応用可能な再生食道は、(1) 蠕動運動、(2) 十分な長さ、(3)全足場材料の臨床的安全性、の3点が必要で、この3条件を満たす食道再生は従来不可能であった。その理由は、①瘢痕 (線維)化、② 血流不足、③臨床的に安全な材料、にある。応募者らは、H20までの科研費で上記①をほぼ解決し、瘢痕(線維)化しない(つまり蠕動運動する)全周性食道を再生した(業績11)。次にH21-23と24-26科研費で②③の一部を解決し(業績3-8特許2,9-11など)、血流豊富な消化管壁の作成法と臨床的に安全な足場材料を開発した。本研究はこれを更に発展させ、未だ成功報告のない臨床応用可能な(上記3条件を満たす)全周性食道を再生する。 具体的には、イヌを用いて、(1)の再生食道の線維化瘢痕化に対しては、ADSC、平滑筋細胞、FBと口腔粘膜細胞を播種した羊膜+吸収性不織布の再生足場を用い、(2)の血流不足と粘膜層委縮・消失に対しては、前記の再生足場を大網で裏打してロール状三重巻きチューブを作成する。(3)臨床的に安全な再生足場は、羊膜と安全性試験の終了した新規の吸収性不織布と熱架橋ゼラチンの足場を用いる。前記チューブを熱架橋ゼラチンで覆い、腹腔内共培養し、三重の血管分布層(大網)から隣接再生足場へ早期に血管新生させて、瘢痕化せず粘膜層を再生維持し、臨床応用可能な(すなわち蠕動運動を持ち、20cm以上と十分に長い)全周性食道を再生する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度には計画書に沿った研究を行った。(A)IN VITROの実験:ヒトに近い消化管を持つイヌを実験に用いた。全身麻酔下にイヌを開腹し、無菌的に実験動物から口腔粘膜、膀胱上皮、脂肪組織由来幹細胞、線維芽細胞、胃平滑筋細胞を採取・培養し、吸収性不織布を合わせた再生足場上に播種し培養して「細胞を播種した足場」を作成する検討を行った。この結果、IN VITROでイヌの口腔粘膜細胞(扁平上皮細胞と線維芽細胞)、胃平滑筋細胞、膀胱上皮を播種した再生の足場を作成できる事が明らかになった。(B)In Vivo実験その1=ラットを用いた実験:予め作成した再生の足場を使用し、ラットを用いた再生実験を行った。ラットを全身麻酔下に開腹し、肝臓脈管内に界面活性剤等を注入して消化器細胞としてまずは肝細胞浮遊液を得た。肝細胞浮遊液を足場に播種し、更に大網で裏打ちした。これをロール状に三重に巻いてチューブ状とし腹腔内に1-4週間置き、この間に(a)消化器由来細胞の肝細胞を三次元で腹腔内で培養出来るか否かを検討した。(b)大網血管から血管が「細胞を播種した足場」に新生するかを検討した。この操作は消化器を再生させるチューブの腹腔内熟成の基礎実験である。上記の検討の結果、腹腔内培養を行った1-4週官の期間内に、大網から足場内へ新生血管が侵入すること。その場合には、間質細胞(ADSC?)を播種しておくとより血管新生が良好である事、大網を巻かない場合に比較して有意に肝細胞の生着・維持が良好になる事、これら少なくとも4週官は継続すること、その理由としては足場内部まで血管が早期に新生するために血流が良好に保たれ、消化器細胞層の再生・長期維持がなされると考えられる事がことが明らかになった。In Vivo実験その2=イヌの動脈再生実験:犬を開腹して腹部動脈を露出し、これに動脈再生の足場を移植した。現在は、動脈の再生には長時間が必要であるので、現在は経過を観察中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策 平成27年度の研究と基本的に同じである。(A)IN VITROの実験:ヒトに近い消化管を持つイヌを実験に用い、全身麻酔下にイヌを開腹し、無菌的に実験動物から口腔粘膜、膀胱上皮、脂肪組織由来幹細胞、線維芽細胞、胃平滑筋細胞を採取・培養し、吸収性不織布を合わせた再生足場上に播種し培養して「細胞を播種した足場」を作成する。H27年度と異なるのは、H27どの研究をさらに推し進めてVITROで口腔粘膜の扁平上皮細胞や膀胱の移行上皮細胞などの上皮系細胞と線維芽細胞や胃平滑筋細胞などの間葉系細胞の共培養を再生の足場上に播種して共培養を作成する技術を確立ことを目標とすることである。(B)In Vivo実験その1=ラットを用いた実験:予め作成した再生の足場を用いてラット腹腔内で再生実験を行う。H27年度と同様にラットを全身麻酔下に開腹し、肝臓脈管内に界面活性剤等を注入して肝細胞浮遊液を採取し、この肝細胞浮遊液を足場に播種した後に大網で裏打ちし、これをロール状に三重に巻いてチューブ状とし腹腔内で培養する。27年度と異なるのは、(a)培養期間を更に長期とすること、(b)肝障害モデルすなわち予め肝障害状態を作成したラットの肝組織が再生される時期に合わせて腹腔内培養する実験モデルを使用すること、の2点である。In Vivo実験その2=イヌの動脈再生実験:27年度には犬を開腹して腹部動脈を露出し、これに動脈再生の足場を移植したイヌの検討を行う。動脈の再生には長時間が必要であるので、現在は経過を観察中であるが、その一部は28年度内に犠牲死せしめ、動脈の再生状態を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物を飼育する動物飼育舎の使用可能枠の割り当てが不足したので、H27年度の期間内に全ての実験動物を購入することが出来ない状況で、ビーグル犬1頭が未購入であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年5月にはビーグル犬を購入してつづきの実験を行う事が決定しており、既に実験動物業者に発注済みである。
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