研究課題
食道扁平上皮癌におけるがん代謝を制御する分子機序を解明することを目的として研究を行った。当初、食道扁平上皮癌症例の中で高body mass index (BMI)症例と正常BMI症例の比較を行うことを計画していたが、BMIは年齢や筋肉量に影響されるため、患者の代謝異常を反映するより良い指標として、CT画像による内臓脂肪量を測定とすることとした。まず初めに臨床例において内臓脂肪量が食道扁平上皮癌の予後に影響するか否かを後ろ向きに解析した。この結果、内臓脂肪量の多い症例は少ない症例に比較して有意に予後不良であること、さらに内臓脂肪量の多い症例は再発後の予後も不良であることを明らかにした(Ann Surg Oncol 2015)。近年、我々は、肥満モデルマウスの脂肪細胞から慢性炎症に関与するホスホリパーゼA2 (PLA2) familyの2つの遺伝子PLA2G5とPLA2G2Eを同定し、これらのmRNAはヒト脂肪組織で高発現していることを確認した(Cell Metab, 2014)。また、adiponectinは脂肪細胞から分泌されるタンパクであるが、血中に多く存在し、血漿adiponectinがKRAS遺伝子変異を伴う大腸癌の発癌に関与することを報告している(J Natl Cancer Inst, 2015)。われわれは、内臓脂肪から分泌される増殖因子が食道扁平上皮癌細胞におけるがん代謝に影響する可能性を考えており、今後の研究においてはこの点に着目して、内臓脂肪の多寡によるサイトカイン産生能の差異と、それが食道扁平上皮癌の代謝に与える影響を明らかにしたい。本年度は食道扁平上皮癌症例のサンプリングを前向きに進めた。また、手術時に採取される大網の一部を内臓脂肪としてサンプリングする準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
臨床データの後ろ向き解析により、今後比較検討する対象を絞り込むことができた。また、今後の分子生物学的検討にむけたサンプリングを進めることができた。
食道扁平上皮癌症例のCT画像の解析により、内臓脂肪量の測定を前向きに進める。食道癌の手術時に同時に採取される大網の一部を内臓脂肪としてサンプリングし、PLA2G5、PLA2G2E、adiponectinの発現が内臓脂肪量に依存するか否かを検討する。また、血漿中のこれらのサイトカインが内臓脂肪量に影響されるか否かを検討する。さらに、これらのサイトカインが食道扁平上皮癌のがん代謝に影響するか否かを明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Ann Surg Oncol
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