研究実績の概要 |
我々は切除検体おいてHomogeneousにHER2過剰発現を認める胃癌はHeterogeneousにHER2過剰発現を認める症例よりトラスツズマブの治療効果が高い事を報告してきた。本研究ではHER2がHomogeneousに過剰発現した胃がんとHeterogeneousに過剰発現した胃がんで分子生物学的な背景の違いを明らかにし、トラスツズマブ耐性機序を解明しそれらを克服する新たな治療戦略を検討する事である。28年度の主な実績として1.胃癌の7割以上を占める切除不能症例から得られた生検検体で検討しデータの再現性を得た(Homo.vs.Hetero.:mPFS 10.6 vs. 5.6, HR2.054, 95%CI, 1.03-4.09, p=0.036, mOS 27.6 vs. 14.1, HR3.632, 95%CI 1.34-9.88, p:0.007)(ASCO-GI 2017)。2.免疫染色を施行しHER2以外のEGFR, HER3, cMET, FGFR2の膜蛋白過剰発現をHomo群とHetero群で比較した。切除症例での陽性率はEGFR (Homo vs. Hetero 85.7% vs. 90.9), HER3 (42.8% vs. 9.1%), FGFR2 14.3% vs. 18.2%)であった。免疫染色上は明確な陽性率の違いを現時点では示せなかった(今後、適切なカットオフ値の検討および症例数の増加を考慮している)。またEGFR陽性の一部の症例においてはHER2と相互排他的な蛋白過剰発現を認める所見も得られ、それぞれの部に異なるRTKsの増幅を確認する目的でDISHを予定している。cMETにおいてはIHCでの判定が困難であった、より定量的な解析を目的に遺伝子発現解析にての比較を予定している。3.耐性機序の克服に関しては未だ切除検体からHER2陽性胃がん細胞株が樹立されておらず、今後cell lineを用いた研究を検討している。
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