研究課題/領域番号 |
15K10125
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
森田 勝 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (30294937)
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研究分担者 |
江頭 明典 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, その他 (00419524)
藤 也寸志 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (20217459)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
佐伯 浩司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80325448)
益田 宗幸 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (90284504)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食道癌 / 頭頸部癌 / 喫煙 / 飲酒 / 癌抑制遺伝子 / メチル化 / 酸化的DNA損傷 / 重複癌 |
研究実績の概要 |
食道・頭頸部領域の癌の発生には喫煙、飲酒が強く関与している。本研究は、食道癌の発生・進展過程にける喫煙・飲酒が惹起する分子生物学的機序を明らかにすることを目的に検討する。また、喫煙・飲酒を契機として発生する頭頸部・食道領域の多発癌発生の特徴と発生メカニズムも検索をする。最終的に、これらを難治性の食道癌・頭頸部癌の予防、治療効果の予測につなげることを目的とする。本年は下記の研究を行い英文論文として発表した。 1.若年発症食道癌における臨床病理学的研究:食道癌は一般に高齢者に発症することが多いが、発症に環境因子の暴露に関連が深いことを考慮すると、若年発症の食道癌においては喫煙・飲酒などの環境因子への暴露がより強い可能性がある。そこで、若年発症した食道癌における環境因子への暴露、癌多発を検討した。その結果、若年者食道癌は全切除症例中6.3%と少ないが、臨床学的特徴として頭頸部癌の合併症例が多いことが分かった。さらに、若年者の多発癌症例は大部分が重喫煙者で大酒家であった。このことより、環境因子の過度の暴露が若年者における食道・頭頸部の多発癌に関与している可能性が示唆された。 2.食道癌進展における上皮間葉移行(EMT)関連タンパクの関与:食道癌の浸潤、転移の過程においてがん細胞のEMTはきわめて重要な事象である。SIP1はEMT関連タンパクであるが食道癌においてその意義は明らかでない。今回、食道癌症例において免疫組織学的にEMT関連タンパクの発現を検討した。その結果、SIP1発現は上皮マーカーと逆相関し、病理学的には脈管侵襲、リンパ節転移と相関するとともに多変量解析にて独立した予後不良因子であった。以上よりSIP1はEMTを介して、食道癌の進展に関与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通りに遂行でき、「若年発症食道癌における臨床病理学的研究」および「食道癌進展における上皮間葉移行(EMT)関連タンパクの関与」が英文雑誌に掲載された。(Ann Surg Oncol 2015)
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今後の研究の推進方策 |
環境因子の暴露による影響をとくに食道・頭頸部の多発癌の発生に着目し、検討を進める。まず、重複癌の実態を明らかにする一方で、病理学的にそれぞれの病変の癌抑制遺伝子や酸化的DNA損傷のマーカーとその修復系の発現を検討する。さらに単発癌症例および多発癌症例の間でLINE-1のメチル化を比較検討し、ゲノム全体のメチル化が環境因子の暴露に影響をうけているか、多発癌の発生に関連するかを検討する。一方、環境因子がEMTに及ぼす影響も全く明らかでないことより、今後、この関係も検索予定である。また、若年発症食道癌症例にも注目し、同様の検討をおこない、通常の高齢者食道癌と比較検討することにより、環境因子による発癌メカニズムにつなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行した。当初の見込み額と異なったが、研究計画に変更はなかった。前年度の研究費も含め、上記のごとく当初予定通り研究を行うが研究の推進の為には本年の繰越額を含めて研究費が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り研究を行う。
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