研究課題
喫煙と飲酒などによる慢性炎症は、消化管、特に食道の発癌に強く関与しています。慢性炎症によるIL-6の上昇がゲノムワイドな低メチル化を惹起しますが、我々は喫煙と飲酒が食道の正常細胞においてゲノムワイドな低メチル化と関連することを明らかにし、喫煙とアルコールによる慢性炎症がゲノムワイドな低メチル化を引き起こすことを支持しました。更に食道癌においてゲノムワイドな低メチル化は予後不良因子であることも明らかにしました。さらに今回の研究で、まだら食道(ヨード不染帯の食道癌好発部位)や食道多発癌の症例における食道非癌部のメチル化が低下していることを証明し、ゲノムワイドな低メチル化が多発癌の発生に関与していることが明らかとなりました。食道癌において、ゲノムワイドな低メチル化症例ではPAK1及びPAK4のコピー数異常があることを明らかにしました。またケモカインについても、CXCL12発現症例ではリンパ節転移が有意に多いと報告されているが、我々の研究でもゲノムワイドな低メチル化を伴う食道癌において各種ケモカインのメチル化異常を認めており、ゲノムワイドな低メチル化と炎症性メディエーターとの関連が支持されました。食道癌の化学療法におけるバイオマーカーとして、我々は今回FANCJ遺伝子に注目して研究を行いました。FANCJは、DNAのdouble strand break修復とinterstrand crosslinks 修復の両方に関与しており、5-FUは前者を、シスプラチン (CDDP)は後者を引き起こすことが分かっています。今回の研究でFANCJ発現が低い食道癌は術前化学療法(5FU+CDDP)の効果が高く、またFANCJ低発現の食道癌において術後に5FU+CDDPを施行した群は手術単独群と比して有意に予後良好でした。また、術後化学療法を行った食道癌に置いて、FANCJ低発現群は高発現群よりも有意に予後良好でした。以上よりFANCJの発現は化学療法の効果判定として有用なマーカーであることが支持されました。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Surg Laparosc Endosc Percutan Tech
巻: 27(3) ページ: 197-202