研究実績の概要 |
本研究は、5-FUによる効果・有害事象を規定する薬理遺伝学的バイオマーカーの同定と機能解析を行うことを目的としている。 1. DPYD遺伝子(5-FU分解酵素であるDPDをコード)のスプラシングバリアンを生じる原因となる遺伝子多型を生命科学情報データベースより予測した。遺伝子多型の一つであるSingle nucleotide polymorphism (SNP)のデータベース (http://www.nlm.nih.gov/projects/SNP/)を用いてDPYDの総SNPを抽出したところ5645個であった。その中でpre-mRNA splicingに影響をきたし得るコンセンサス配列(エクソン内、及びエクソン近傍50bp以内のイントロン)内のSNPは計148個であり、さらに、in silicoツール(Human Splicing Finder; www.umd.be/HSF/)を用いてsplicingに影響を及ぼすと考えられる計4個のSNPを同定した。また、過去の報告から5-FUの副作用に関連する3個のSNPをも合わせ、計7個のSNPを解析対象とした。さらに5-FUの代謝に関連する他の遺伝子、MTHFR, OPRT, TYMSについても解析対象とし、4遺伝子、33の遺伝子多型を解析した。 2. 5-FUの投与を受けた胃癌・大腸癌患者末梢血よりRNAを抽出(103名)し、4遺伝子、33の遺伝子多型に対し、Direct Sequence法、PCR-RFLP法、MassARRAYのいずれかを用い遺伝子多型を同定した。結果、3種の遺伝子で、6つのSNPを同定できた。 3. 同定した遺伝子多型と5-FUの投与を受けた胃癌・大腸癌患者における有害事象(CTCAE 3.0グレード3以上)の発現頻度を統計学的に解析した。、副作用発現に関連する遺伝子多型を同定した。DPYDのc.496G>A, c.1905+1G>A, c.2303C>Aのいずれかを有する患者(5.3%)には有意に有害事象が発現していた(p = 0.003, OR = 4.68, 95% CI: 1.71-12.8)。また、特に全身倦怠感の発症と有意に相関していた(p = 0.007, OR = 6.68, 95% CI: 1.87-23.9)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4遺伝子、33の遺伝子多型に対し、PCRやSequencingを行った結果、3種の遺伝子で、6つのSNPを同定できた。 1) 3 SNPs in DPYD: c.496A>G, c.1905+1G>A, and c.2303C>A 2) 2 SNPs in MTHFR: c.677C>T and c.1298A>C 3) 1 SNP in OPRT: c.638G>C さらに、それらを、5-FUの投与を受けた胃癌・大腸癌患者の副作用情報と照らし合わせ、副作用発現に関連する遺伝子多型を同定した。
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