研究課題/領域番号 |
15K10131
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高村 博之 金沢大学, 附属病院, 講師 (40377396)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Zfp57 / 大腸癌 / 肝転移 |
研究実績の概要 |
2015年度は,ヒト大腸癌由来の HCT116 と HT29 細胞を用いて,Zfp57 遺伝子の発現を制御 (過剰発現とノックダウン) することにより,増殖,浸潤,転移能を制御できるかどうかを,in vitro のみならずヌードマウスを用いた in vivo 実験系で明らかにした.2016年度は,ヒト大腸癌由来の HCT116 と HT29 細胞では,Nanog 遺伝子の制御により Zfp57 の機能が制御されるのかどうかを検証するとともに.さらに Zfp57 の下流に位置するインプリンティング遺伝子である IGF2 のノックダウンや IGF2 の中和抗体により,その足場非依存性増殖能が制御できるかどうかを検証した.
成果① HCT116 と HT29 では,Nanog をノックダウンすると Zfp57 の発現が低下して足場非依存性増殖能が低下した.一方,Nanog を高発現させると Zfp57 の発現が亢進して足場非依存性増殖能が亢進し,この機能は Zfp57 のノックダウンで抑制された 成果② HCT116 と HT29 では,Zfp57 をノックダウンすると IGF2 の発現が低下して足場非依存性増殖能が低下した.一方,Zfp57 を高発現させると IGF2 の発現が亢進して足場非依存性増殖能が亢進し,この機能は IGF2 のノックダウンや IGF2 の中和抗体により抑制された.
以上より,ヒト大腸癌由来の HCT116 と HT29 細胞では,Nanog 遺伝子が Zfp57 を介して足場非依存性増殖を制御していることを明らかにした.さらに Zfp57 の下流に位置するインプリンティング遺伝子である IGF2 が,その足場非依存性増殖能獲得に重要な役割を果たしていることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種ノックダウン細胞の作製に手間取り,スケジュールの若干の遅れをきたしておりますが,概ね順調に進捗しております.
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今後の研究の推進方策 |
臨床で広く使用されている糖尿病治療薬の一つが,癌幹様細胞の機能制御に有用であることが明らかにされているが,直ちに臨床応用可能な本薬剤を用いて,大腸癌由来の培養細胞で Zfp57 の機能(足場非依存性増殖能)を制御できるのかどうかを確認する.さらに,現在,国内で IGF2 をターゲットとした分子標的薬の開発や Zfp に対する阻害薬の開発が進められており,これらも用いて大腸癌由来の培養細胞で Zfp57 の機能(足場非依存性増殖能)を制御できるのかどうかを検証したい. さらに,上記実験系で Zfp57 を介した足場非依存性増殖抑制が確認された薬剤については,マウスの大腸癌肝転移モデル(in Vivo)を用いて,投与許容範囲内で実際に転移抑制効果が発揮されるのかどうかを検証する.最終的には,その成果をもとに,臨床応用への道筋をつけたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
テロ等の理由により国際学会での発表を見送ったことと,欧文誌への投稿準備が今年度にずれ込んだこと,実験の若干の遅れで物品や実験動物購入費が若干低く抑えられたことなどが,主な理由です.
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次年度使用額の使用計画 |
実験に使用する薬剤,器具,試薬,抗体,核酸などの物品購入や,実験動物の購入に充てさせていただきます. また,今年度は既に国際学会での発表を予定しており,これに参加するための旅費や,現在,欧文誌への投稿の準備を進めておりますので,これにかかる費用に充てさせていただきます.
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