研究課題/領域番号 |
15K10133
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中山 吾郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90422782)
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研究分担者 |
藤井 努 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 教授 (60566967)
小寺 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10345879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クローン病 / 抗TNF-α抗体 / インフリキシマブ / アダリマブ |
研究実績の概要 |
これまで研究代表者らは,クローン病に対する術後寛解維持治療の臨床的意義について後方視的に検討を行い報告してきた.これらの成果をもとに,クローン病の術後抗TNFα抗体維持療法の有効性と安全性について以下の臨床第2相試験を立案,実施した. 26例のクローン病術後患者を対象として,抗TNFα抗体薬剤であるアダリムマブの投与を行いその有効性と安全性について検討を行った.主要評価項目は術後1年時点の内視鏡的吻合部再発率(Rutgeerts endoscopic recurrence scale ≧ i2)とし,副次的評価項目として臨床的再発率,治療コンプライアンス,安全性等について検討を行った.治療回数中央値は56回で,主要評価項目である術後1年内視鏡的吻合部再発率は35%であった.術後1年時点で臨床的再発を17%に認めたが,外科的手術を必要とした症例は認めなかった.また,Grade 3以上の有害事象を15%に認めたが,これらによる治療中止例や死亡例は認めていない.症例数設定根拠となる術後1年内視鏡的吻合部再発率の閾値は80%,期待値は10%であったことより,試験治療は有効である可能性が示唆された.なお,これらの短期治療成績については,日本外科学会の学会誌(英文)であるSurgey Todayで報告を行った(Asada T, Nakayama G, Kodera Y, et al. Postoperative adalimumab maintenance therapy for Japanese patients with Crohn's disease: a single-center, single-arm phase II trial. Surg Today. 2018 Feb 23. doi: 10.1007/s00595-018-1634-y. [Epub ahead of print]). 今後,長期成績に関する経過観察を行うと共に,体組成変化を含む再発危険因子の検討,他の抗TNFα抗体薬剤との比較検討等を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
症例集積に想定以上に時間を要したため,若干の遅れが生じている.一方で,着実に計画は遂行され,かつ難病特定疾患であり年々増加傾向にあるクローン病の新たな治療オプションを提示する有用な結果が期待できると考える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本年度に報告を行ったクローン病術後寛解維持治療としてのアダリムマブの短期治療成績に加えて,長期成績に関する検討を行い,国際学会で報告を行う予定である.さらに,体組成変化を含む再発危険因子の検討,他の抗TNFα抗体薬剤との比較検討等を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
クローン病術後寛解維持治療としての抗TNFα抗体薬剤の短期治療成績ついて有用な研究成果が得られたが,さらに確実な研究成果を得るために,① 長期治療成績に関する検討,② 再発危険因子の検討,③ 他の抗TNFα抗体薬剤との比較検討,が重要であると考えたため,次年度の使用が必要と考えた.
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