研究課題
本研究は、大腸癌腹膜播種患者の血清中ならびに腹水中microRNAの網羅的解析を行い、腹膜播種と密に関与する microRNA関連候補を同定し、予後との関連を検討する。これは、大腸癌腹膜播種の新たな診断法を確立することにより、腹膜播種高リスク群を抽出し、新たな治療戦略の構築、腹膜播種患者の予後・QOLの向上をめざすことを目的とする。一昨年度は上皮間葉移行に関わるmicroRNAのひとつであるmiR203は肝転移巣で原発巣に比べて有意に発現が高く、in situ hybridisationでその再現性を確認した。次に大腸癌患者の血清を用いて血清中miR203の発現を検討した。術前血清miR203レベルは各種転移(肝転移、腹膜播種、リンパ節転移)を有する患者を高率に識別可能であった。さらにマウスを用いた肝転移、全身転移モデルでの検証において転移を有するマウスはコントロールのマウスに比べて血清中miR203の発現が有意に高く、その発現レベルは転移腫瘍ボリュームと有意に正の相関を示した。 以上より、転移巣由来の血清miR203は腹膜播種を含む遠隔転移マーカーとなり得ることを示した。さらに本年度はsmall RNA網羅的解析を行い、抽出したmiRNA群の中から癌組織で有意に発現増加をきたすいくつかのmicroRNAに着目し、その発現解析を行ったところ、miR-549aが複数のコホートで有意に発現増加をきたすほか、全生存期間、無再発生存期間における独立予後不良因子となり、またリンパ節転移、遠隔転移、腹膜播種と有意に相関することが明らかとした。さらにその機能解析をin vitro/in vivoでおこなうとmiR-549aは増殖能、遊走能、浸潤能を促進し、腹膜播種形成に深く関与するアノイキス抑制性を更新することが明らかとなり、そのmiR-549aに発現調節されるがん抑制遺伝子を同定した。
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